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生駒と東京の2拠点生活で公私が充実

「公園はもっとおもしろくできる」。そんな思いから、公私ともにパブリックスペースを盛り上げる活動をする田村康一郎さん。住まいのある生駒と、職場のある東京の2拠点生活で充実した毎日を送っています。

田村康一郎さん

宮崎県出身。東京大学工学部社会基盤学科、同大学院国際協力学専攻を卒業後、海外での交通・都市計画の策定や技術協力に従事。2017年より2年間、ニューヨークに留学。帰国後都市開発事業のコンサルタントに。生駒市と東京都の2拠点生活をし、生駒市で「公園にいこーえん」の活動も行う。

空間を特別な場所にするプレイスメイキング

田村さんは、どのようなお仕事をしてきたのでしょうか。

大学院を卒業後、開発途上国の交通・都市計画のコンサルティング業をしていました。マスタープラン(基本計画)をつくる仕事で、主なクライアントは国際協力系の組織です。アフリカ、アジア、中東の20カ国以上でプロジェクトを行い、一年の半分は海外出張へ行く生活を8年半ほどしていました。

計画をつくってから実際にまちが変化するまでは時間がかかるので、関心が“変化が目に見える仕事”へと移っていきました。まちと生活に変化をもたらすパブリックスペース(公共空間)やオープンスペースでの活動に惹かれ、ニューヨークの大学院「Pratt Institute(プラット・インスティテュート)」に留学したんです。

ニューヨークでどんなことを学んだのですか。

プレイスメイキングです。1960年代にアメリカで生まれた概念で、さまざまな解釈や定義があります。公共空間にいろいろな使い方・関わり方が生まれることで、思い入れのある特別な場所が生まれる。そしてそのプロセスを大事にすることがプレイスメイキングです。

プレイスメイキングの実践をリードするアメリカの非営利組織『Project for Public Spaces』によると、パブリックスペースは人々のコミュニティづくりの場で、地域のニーズを満たし、元気にする力を秘めていると言われています。

ニューヨークのパブリックスペースでは、公平性や市民参加にも力点が置かれていました。公園では人々がパーティーなどいろいろなことをやっていて、日常的で自由な使いこなしが感じられました。表面的なデザインやイベントといった形だけで終わらないものが大切だと学びました。

生活にメリハリがある2拠点生活

帰国した後は?

2014年に結婚し、留学中に息子が生まれたんです。2019年に帰国した後は、育児を考えて生駒にある妻の実家に住むことにしました。フリーランスとして地域プロジェクトやパブリックスペースに関する普及啓発の活動を始め、東京と生駒を往復したり、オンラインで打ち合わせをしたりしていました。

そのときに声をかけてもらった会社に、エリアマネジメントという手法を専門にするまちづくり会社があって、2020年1月から正社員として入社しました。今は大手不動産デベロッパー(まちの不動産を開発する事業者)の再開発事業プロジェクトなどにおいて、どのように空間を上手く活用し、地域を巻き込みながら運営していくかなどをコンサルティングしています。

そこから2拠点生活になったのですね。

はい、ありがたいことに社長から2拠点での働き方を提案されました。「社員の働き方の形態を広げたい。毎日出社する人ばかりではなく、東京以外に拠点をもつ人がいてもいいと思っている」と。実験的なモデルケースとして、社内で初めてこうした働き方をさせてもらっています。わたしが生駒にいれば、関西圏のプロジェクトを担当できるという可能性もありました。

前職では移動が多く、それがとても好きだったので、2拠点生活で移動する気持ち良さを感じています。基本的に東京と生駒で2週間ずつ暮らしていましたが、新型コロナウイルスが流行してからは生駒にいることが多いです。

東京にいる間は仕事に集中でき、メリハリがつきます。その間の育児は妻と義母に任せてしまっていますが、生駒にいるときは息子が週に1回通う「いこま山のようちえん」への送迎を担当。息子を待つ間、外で仕事をするのも気分転換になります。基本は自宅の仕事部屋や市内のシェアオフィスでテレワークをし、天気のいい日には庭を使うこともあります。

生駒に来て、いかがでしたか。

家族以外は誰も知らないし、妻の実家は静かな住宅街にあるので最初は戸惑いました。でも2019年夏、市民が自分のもつ知識を伝える「IKOMAサマーセミナー」で、「公共空間を楽しくしたい!」と題してプレイスメイキングの授業をさせてもらったんです。そこでいろいろな方から声をかけてもらい、生駒におもしろい方がたくさんいらっしゃることが分かりました。

同時期に妻が市民PRチームの「いこまち宣伝部」に入り、妻を通じても「生駒の方はおもしろいな。楽しく暮らしていけそうだ」と感じました。それがとても大きかったですね。まちの人とのつながりこそが大切なんだ、と。

休日の公園をもっとおもしろく!

「公園にいこーえん」の活動はどのように始めたのですか。

妻が「いこまち宣伝部」で真下(ましも)藍さんと知り合い、真下さんの企画に私たち夫妻が興味をもったんです。平日の公園は人が多いけれど、息子さんと公園で遊ぶ休日には誰もいないことが多くて、平日働いている真下夫妻は休日の遊び場に悩んでいました。我が家も同じ思いだったので一緒に活動することにしたんです。公園は、まさにパブリックスペース。

公園に行く日時を呼びかけて2019年9月に第1回を行い、それから外出自粛期間中の一時中断をはさんで、毎月開催しています。夏は水遊び、秋は落ち葉遊びなど、子どもたちが季節を感じられるよう工夫しています。趣味の延長だから場をつくりすぎないこと、参加者をお客さん扱いしないこともポイントです。自治会長さんや市の公園を担当する課の方とコミュニケーションをとるうち、例えばテントやコタツなどを持ち込んでもいいと分かり「意外とできちゃうんだ!(笑)」と感じました。

自分たちの手で自分たちのやりたいことが、やりようによって楽しくできるから、公園に可能性を感じています。毎回20〜30人が来てくれて、特に平日働いている方が喜んでくださっている印象ですね。この活動で、生駒に住むのがよりおもしろくなり、地域に関わっている感覚がわきました。

わたしは「パブリックスペースにこそ“まちの力”が最も見える」と思っています。そこがどう使われているのか、どうつくられているのかに、違いが出るからです。これからも公私ともに、盛り上げていこうと思います。

(2021.02.22)

写真3枚は「公園にいこーえん」の様子。萩の台第2公園で活動中。「紙芝居の台はDIY用の作業台と組み合わせた真下さんの旦那さんの手づくり。さらにお母さまが読み手になってくださいました。みんなが知恵や力を出し合う形で活動が広がったのは嬉しかったですね」。地域のおじいさんから折り紙を教わったり、みんなでコタツを囲んだりもしています。(写真提供:公園にいこーえん)

「だれでも先生」「だれでも生徒」を合い言葉に、市民の皆さんが先生になって楽しい学びの機会を提供し合うセミナー。IKOMAサマーセミナー実行委員会が毎年夏に開催しています。
IKOMAサマーセミナー

「だれでも先生」「だれでも生徒」を合い言葉に、市民の皆さんが先生になって楽しい学びの機会を提供し合うセミナー。IKOMAサマーセミナー実行委員会が毎年夏に開催しています。
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生駒で暮らす人、おいしいお店、地元の行事。住んでいる人の目線でまちの魅力を発掘して、市内外に発信する市民PRチーム。2015年度から活動開始。主な活動にFacebookページ「グッドサイクルいこま」、フォトブック「いこまの愛しい時間。」、生駒市PR動画「住みよさ まんてんいこま」。
Facebookページ「グッドサイクルいこま」フォトブック「いこまの愛しい時間。」生駒市PR動画「住みよさ まんてんいこま」

いいサイクルはじめよう、いこまではじめよう

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