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キャリアウーマンから、うつわ屋へ

国道163号と富雄川が出会う交差点のほど近くに、⼩さい美術館のようなうつわ屋さんがあります。階段を上ると、丁寧に並べられたうつわたちがお出迎え。店主の⾼根恭⼦さんは、陶芸作品の魅⼒をもっと世に伝えたいと、⾃ら作家さんを取材して⽂章も綴っています。その想いに共感するお客さんは多く、遠く北海道や鹿児島から来店する⼈も。
⾼根さんの⼈⽣や⼤切にしていることは何なのか、お話を聞きました。

⾼根恭⼦さん

⽣駒市⾼⼭町の『暮らしとうつわのお店草々』店主。神奈川県出⾝で、2019年に奈良市に移住。週の前半はライターとして取材や執筆活動を⾏い、⽊・⾦・⼟曜の3⽇間だけお店をオープンする。趣味はあんこと畑。

悩んでこもる⽇々に出会ったうつわ

うつわが好きになったきっかけは?

20代の頃は、東京でイベントの仕事や企業の⼈事・経理などをして働いていました。当時は⾒た⽬を綺麗にすることや、⼈との付き合いに価値を置いていたのでお⾦をかけるのはもっぱらメイクや服、飲み会でした。30代に⼊り、周りが昇格や結婚などの転機を迎える中で、⾃分には何があるんだろうと考えるようになって。好きなことや得意なこともないし、どうしていいか分からず、内にこもった時期がありました。

そんなとき、SNSで隣町にあるうつわ屋さんを⾒つけたんです。訪れると、店主は穏やかだし、空間も素敵で、救われた気分に。ふと1枚3000円のうつわが⽬にとまり、まとっている空気感や、陶芸家さんの⼿仕事の繊細さに惹かれました。それまではずっと100均で買った⾷器ばかりを使っていたので「⾼いな…」と悩みましたが、⼼が動いたことが嬉しくて思い切って買ってみました。帰ってからテーブルに置くと、部屋全体の雰囲気まで⼀気に変わったようで、「うわぁ」と感動したのが始まりです。

どうしてライターの活動を?

少しずつうつわを集める中で、陶芸家さんとも知り合うようになりました。色々お話していくと、うつわには陶芸家さんのお人柄や想いが滲み出ていることが分かり、ますます好きになりました。
うつわを今までただの「もの」として見ていたのが、体温を感じるようになったのと同時に、うまく伝えられないもどかしさを感じる陶芸家さんと出会ったことも重なって、「代わりに⽂章で伝えたい」と思うようになったんです。それからライターの学校に通い、陶芸家さんを取材して、記事を書くようになりました。

今振り返ってみるとたぶん根底には、父の存在が大きかったように思います。実家は自動車鈑⾦塗装業をやっていて、⽗は職⼈としてほぼ⼀代で会社を築き、50年続けたのですが、時代の流れで、数年前に会社を畳みました。やめる直前に、父が漏らすように放った言葉「悔しい」や情景が忘れられず、ずっとモヤモヤした感情を抱えていたことが開いてきたのかもしれません。

陶芸家の想いを伝えるために

奈良に移住したのはなぜですか?

転職したからです。ちょうど⼈⽣を⼀から考え直したいタイミングでもあったので、⾝ひとつで奈良に来ました。勤めながらライターの活動も続けていたので、陶芸家さんを取材して、一時期は『奈良新聞』に連載をしていましたが、全エネルギーを執筆に注ぐことができず、中途半端な状態が続きました。だんだんと⽂章を書くほうに振り切りたいと思うようになり、ふと「お店をやろうかな」という気持ちが湧き出てました。

そうして2021年6⽉末に退職し、開店への準備をはじめました。正式にお店の場所が決まるまでは8ヶ月ほどかかったのですが、その間は「なぜお店をやりたいんだろう」「どういうお店にしたいんだろう」という動機を自問自答でかたちづくっていきながら、物件を探しました。

⾼⼭地区との縁は?

2022年2⽉に、知り合いの陶芸家さんが「いい物件あるらしいよ」と、今のお店の管理主の⽅に繋げてくださったんです。⾒に⾏くと、窓枠など建物のディテールが素晴らしく、空間を美しい額縁のように⾒せていました。周りの人たちも「⾼⼭町は良いね」と絶賛するし、自分がもともと理想に描いていた情景、⾵の心地よさや⿃や虫の声、緑や空が広がっていて…思わず即決しました。

価値観が変わる場所をつくりたい

オープンしてみて、どんな気持ちですか?

毎⽇が楽しいです。うつわや料理が好きという方がたくさん来てくれて⼀緒にいたり、話したりするだけでうれしくなるんですよ。お店にいる時間だけではなくて、お店の場所を調べて来るまでの時間だったり、家に帰ってからうつわとともに過ごす時間を楽しんでいる方が本当に多くて。そんなことを知るたびに、お店やっていてよかったなぁと思います。

「まちのうつわ屋さん」になるために

お客様⼀⼈ひとりとじっくり向き合っていますね。

たまにお客さんが、お店に来た理由や悩みなどをポロッと話してくれるときがあります。すべては言わないまでも、ここで過ごした時間の大きさを感じる瞬間があります。そういうとき、自分になにができるのかな..といつも思うのですが、うつわをじっくり見たり楽しくお喋りするだけで心がほぐれることがあるのかなぁと思っています。それは、私が隣町のうつわ屋さんで経験したこととも重なるのですが、1枚3000円のうつわで何かが変わることがあるかもしれない。うつわを通して新しい出会いが広がっていくかもしれない。そういう可能性がある場所に育てていけたらいいなと思っています。

これから、どんなことをしていきたいですか?

生駒に軸足を置いたお店になっていきたいです。せっかく素敵なご縁をいただいてこの場所でお店をやらせてもらっているので、高山町をはじめとした地域の人たちと繋がっていくイベントを開催していけたらいいなと思っています。

また2023年春に向けてお店を改装してギャラリースペースを広げたいなと考えています。うつわの展⽰会をはじめとして、絵画や写真などのイベントや、これからお店をやりたい⼈、個⼈で活動している作家さんのお披露⽬の場にもなれたらいいなぁと妄想しています。
うれしいことに最近では、近所の方がよく立ち寄ってくれるようになったので、これからはますます“まちのうつわ屋さん”として地域に密着したお店でありたいなぁと。妄想は広がるばかりですね。

(2023.1.13)
ライター:いこまち宣伝部6期⽣ 中村京⼦ / カメラマン:いこまち宣伝部6期⽣ さくさく

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