心を耕し”culture”が交わる場所に。地域をつなぐ駄菓子屋店主
俵口と喜里が丘の境、閑静な住宅街のなかに、日中はモーニングやランチを楽しむ大人、夕方は遊びに来た子どもたちで賑わう一軒家があります。
店主は20代の吉村牧志さん。2022年に空き家を買い、母とともに駄菓子屋&カフェ『Colere』(コレレ)をオープンしました。彼女がなぜ店を開いたのか、お話を聞きました。
吉村牧志さん
生駒市喜里が丘出身。語学が大好きで、日本語・英語・オランダ語を話すほか、現在スペイン語も勉強中。Colereでは、一緒に宿題やお絵描きをしたり、ギターを片手に歌ったりする。
子どもが集まり交わる、家のような場所をつくりたい
なぜ、駄菓子屋を始めたのですか?
子どもと関わることがしたいと思っていたんです。高校のときには1年休学して、子どもの幸福度ランキングが高いオランダにも行きました。
卒業してからは、働きながら国内の島を旅しました。小さな島は子どもが少ないので、地域みんなで見守ります。私にはそういう経験がなく、近所の人の顔も知らずに育ちました。その頃から、子どもと関わる地域のあり方を意識するようになったんです。
コロナ禍で生駒に居続けることになり、何か始めるには良いタイミングでした。6年ほど前に母が自宅ガレージで駄菓子屋をしたことがあったので、子どもたちが集まれる場所をつくろうと、まずはガレージで小さく再開しました。
屋号『Colere』はどういう意味の言葉なんでしょう?
ギリシャ語で”culture(文化)”、”cultivate(耕す)”などの語源です。中でも”culture”は「心を耕す」という意味で生まれたそうです。国だけでなく、一人ひとりみんなが違う習慣や文化を持っていますよね。そんな人たちが一緒に心を耕せる家のような空間になったらいいなと思って名付けました。
悩んだタイミングで出会った一軒家へ
自宅ガレージから今の家に移転されたきっかけは?
子どもたちがたくさん集まるようになったので、ガレージは狭いし、道路に面していて危ないと思っていたんです。暑い夏はお菓子の管理も大変で。やめようかと悩んでいたときに、近所に空き家があると聞いて見に行きました。家を買うつもりはなかったのですが、玄関を開けたら広間があって駄菓子屋にピッタリ。この場所で続けようと決めました。
一軒家になって良かったことはありますか?
子どもたちが、友達の家のように過ごしてくれることが、うれしいです。水鉄砲をしたり、ノコギリで板を切ったり、意味もなく穴を掘ったり。母の駄菓子屋に来ていた子が何年か越しに訪れてくれたり、卒業式に挨拶に来てくれたりした子たちもいました。
あとは、子どもたちが自主的にお代を払ってお釣りも計算して、店番や会計役をしてくれることですね。売り上げ目的じゃなく、私と母が子どもと一緒に遊んでいたのが良かったのかもしれません。この場所を使ううちに、みんなが自分の居場所にしてくれたという感じです。
目標は、多世代をつなぎ人が支え合う地域にすること
新しい『Colere』で実現したいことは何でしょう?
子どもと地域の大人を繋ぎたいです。移転をきっかけに、喫茶も始めました。日中は地域の方々のサロンのようにもなっているので、駄菓子屋に来る子どもたちと引き合わせたいなと思っています。母の世代は時間に余裕があってゆっくり話ができるので、子どもと相性がいいと思うんですよ。高齢の方も場所があれば寂しくないし、ママ友たちも集まれるし。隣近所で支え合っていた昔ながらの形を取り戻したい。まずは、みんなが挨拶できる地域にするのが目標です。
Colereの軸は、楽しむこととお金に換算できない価値
活動を続けるにあたって、大切にしたいことは何ですか?
まずは楽しむことですね。無理をして余裕がなくなると、続かないと思うから。大事なのは、焦らず時間をかけて、地域の方とお友達になること。私は育った生駒が大好きで、子どもたちにも生駒愛を語っています。どうしてそんなに好きなのか、友達にも聞かれるけれど分からないんですよ(笑)。でも地域の人と関わるうちに、いつか分かるかもしれない。それも楽しみです。
最後に、子どもたちに伝えたいことはありますか?
お金に換算できない物事の価値を伝えたいです。場所を提供することも価値の1つ。子どもに会いたいから来る人もいるわけで、そういう意味では、子どもたちもお金じゃない価値をこの駄菓子屋に持ってきてくれています。お手伝いの気持ちも同じで、「マキシ、手伝ったから100円ちょうだい」となってほしくない。みんなの「ありがとう」の気持ちで成り立つ環境を築きたいですね。『Colere』という場所で、いろいろな”culture”が交わっていけばいいなと思います。
いいサイクルはじめよう、いこまではじめよう
いいサイクルはじめよう、
いこまではじめよう