まちもわたしも、日々新しく
「社会人だから、納得のいかないことは我慢しなきゃ」「2児のママとして、料理も掃除も好きでいなきゃ」。働く女性として、母として。理想と現実のギャップに揺れてきた中垣由梨(なかがき ゆり) さん。「この3年間で、変われました」という彼女に、きっかけをうかがいました。
中垣由梨さん
デザイナー。奈良県生駒市生まれ。就職したIT関連企業で自治体・企業向けWEB制作の仕事を任され、デザイナーとしてのキャリアが始まる。仕事で地元に関わったことを機に、2015年にフリーランスへ転向。生駒市をフィールドにデザインを手がけている。
https://ico-webdesign.com/
自分にストッパーをかけていた気がする
中垣さんの転機は、会社員時代に、仕事で生駒に関わったことだと聞きました。
そうなんです。わたしは生まれも育ちも生駒です。結婚してからも、ずっと生駒。あらためて「どういうまちだろう?」と考えて。浮かんできたのは「大阪に近いけど、自然が多くて交通も割と便利。以上」みたいな(笑)。そのとき気づいたんです。生駒のこと全然知らんねや、わたしって。
それで、市内のイベントにおそるおそる顔を出すようになったんです。人との出会いは、自分を変えてくれるんですね。こんな生きかたもあるんだ。気づきは大きかったです。
どんな人たちと出会いましたか?
CODE for IKOMA(コードフォーイコマ)に参加すると、デザインがまちの力になることを知りました。いこまち宣伝部に参加したことは、わたしを素直にしてくれました。それまでは会社員やママという役割の中で、自分を出し過ぎてはいけないと思っていたんです。
暮らしの経験が制作につながる
2015年には、フリーランスのデザイナーとして独立されましたね。仕事に変化はありましたか?
パソコンに向かい、マウスを動かして、デザインを考える。一連の制作作業は、同じです。変わったのは、お客さんとの距離感。「いこママまるしぇのフライヤーを、お願いできる?」「ご縁市のフライヤーをつくってほしい」。人との関係から、声をかけていただくんですね。ママ向けの制作などは初めてですが、日々顔を合わせる方と話し合いながら取り組めるのは大きい。
まちでデザインをすると「つくって終わり」じゃないんですよね。当日はイベントに行きますし。自分の子育ての経験が、制作につながることもあります。
ピースキャンドルナイトのフライヤーは、知人にモデルをお願いしたんです。家具の配置から撮影までを、自分で考えて形にしましたね。
輝きかたは、ママの数だけある
働く女性として輝き始めた一方で、ママとしての変化はありましたか?
以前はコンプレックス、ありましたね。雑誌に登場するような「料理ができて、部屋がきれいで、親子ともオシャレなママ」になれない。輝くママになれないんです。料理もインテリアもがんばりましたよ。でも、家でケーキをつくるほどには料理好きではないし。部屋はすぐ散らかるし(笑)。
でも最近、すっと気持ちが軽くなる出来事がありました。娘が、手づくりのナップサックを欲しがっていたけれど、つくれずにいました。そうしたら、近所のママ友達が「よかったら、ナップサックつくるよ」と声をかけてくれたんです。どうして、って聞いたら「いつも娘の写真をきれいに撮ってくれてありがとう。お返しでね」と。得意なことは人それぞれにありますよね。料理が好きなママも、裁縫が好きなママも、一生懸命仕事に打ち込むママも、みんなキラキラママだと思えるようになりました。
人との出会いが、中垣さんを変えたんですね。あらためて、生駒はどんなまちですか?
市外から引っ越してきた人たちの中に、ここを楽しもうとする人が多い。ママ友が「地元のお祭り行こうよ」と逆に地元民のわたしを誘ってくれるんです(笑)。毎年10月に行われる往馬(いこま)大社の火祭り。神輿の担ぎ手の中に、生駒へ移り住んだパパたちの姿があるんです。
新しい人たちが入ってきて、まちをどんどん開拓して「いいね」と言ってくれるから、わたしも地元の魅力に気づける。「負けてられへんな」ってなにか始めたくなる。1人じゃなくて、気の合う仲間と始めていける。楽しいですよね。
(2018.10.09)
奈良県生駒市を中心に、ITを活用して地域課題の解決や、地域の魅力発信に取り組むコミュニティ。プログラムを書くのが得意な人、デザインが得意な人、ユニークなアイデアを持った人などが集う。
CODE for IKOMA
生駒で暮らす人、おいしいお店、地元の行事。住んでいる人の目線でまちの魅力を発掘して、市内外に発信する市民PRチーム。2015年度から活動開始。主な活動にFacebookページ「グッドサイクルいこま」、フォトブック「いこまの愛しい時間。」、生駒市PR動画「住みよさ まんてんいこま」。
Facebookページ「グッドサイクルいこま」フォトブック「いこまの愛しい時間。」生駒市PR動画「住みよさ まんてんいこま」
ママによるママのための月イチマルシェ。ハンドメイド雑貨やアクセサリーの販売、ボディケアやマッサージがワンコインで楽しめるいやしのブースなど、毎回約10店舗が出店する。毎日頑張るママが気軽に立ち寄り、いやされたりワクワクしたりできる場所。
いこママまるしぇ
世代を超えて平和のたいせつさを考えようと、毎年夏、生駒駅前ベルテラスいこまベルステージで開催している市主催のイベント。
ピースキャンドルナイト
毎年、体育の日の前日に開催される。室町時代から続くとされ、奈良県無形民俗文化財に指定されている。(各宮座のあった地域を北座・南座に分け、両方の座から1名ずつ選ばれた火取り役が神火のともった火松明を肩に担げて高座の前の石段を一気に駆け下り、どちらが早く降りるかを競う行事。)
往馬大社の火祭り
いいサイクルはじめよう、いこまではじめよう
いいサイクルはじめよう、
いこまではじめよう