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伸び伸びと暮らそう。子どもたちの成長を支える、手づくりの家

宝山寺の参道沿いの中古物件を購入し、DIYを楽しみながら6人で住まう大上さん一家。大人も子どもも楽しく暮らしている、手づくりの生活空間を紹介します。

overview

居住者構成 6人 | 以前の住まい 生駒市 | 居住開始 2014年 | 木造・2階建て | 敷地面積 87.7m² | 延床面積 148.76m² | 建築 1958年

profile

大阪府出身で現在は京都へ通勤している会社員の大上信幸さんと、静岡県出身で専業主婦の麻紀さん。4人の子どもたちと賑やかに楽しく暮らしています。

宝山寺の参道を散歩していて見つけた家

生駒山の中腹に鎮座し「生駒の聖天さん」として親しまれる、宝山寺。その宝山寺と生駒駅を結ぶ、約1.5キロの参道があります。参道ができた大正時代には旅館や土産物屋が並びましたが、現在は住宅が増えました。まちや山々を望むことができる心地いいエリアです。

参道の階段

そんな参道沿いに住まいを構えたのが大上さん一家。木造の和風な建物に山吹色の外壁が映える、カフェのような佇まいの家。目の前は参道の階段ですが、踊り場に面しているので玄関周りがスッキリとしています。

引っ越した経緯を信幸さんはこう話します。「僕は大阪のマンションで育ち、子どもの頃、周囲を気にする両親から『静かにしなさい』とよく言われていたんです。大きな声で話せないし、音楽も自由に聞けない。それが僕にとってはストレスで。だからこそ、我が子が好きなときに大きな声で歌って踊れるような家に住みたいと思いました」。

家の前の様子

以前は大阪のアパートに住み、信幸さんは大阪の会社に勤めていました。しかし長女の誕生直後、アパートの隣で始まった工事音が気になり、ストレスになったそうです。夫妻は人や車などが多い都会暮らしがいやになり「山が見える静かなところに引っ越したい。通勤圏内で都心から極力離れよう」と考えました。

大阪北部も検討しましたが、二人が選んだのは生駒。2012年、生駒市東旭ヶ丘の賃貸アパートに引っ越したのです。

「住み始めて特に感じたのは、子育てのしやすさでした。子育ての場『みっきランド』を利用したり、子育てサロンに参加したり、近くの自然あふれる公園で遊んだりするなかで、生駒に住み続けたい想いが強くなっていったんです。それで家を購入しようと、中古物件を探し始めました。でも、不動産会社の案内で見学した数軒には、ピンとこなかったんです」と、麻紀さんは話します。

夫妻は「生駒をもっと知りたい」と、休日に公園やカフェ、山上遊園地などを散策。そのなかで、宝山寺の参道を歩いていて現在の家が売りに出ているのを見つけました。

「第一印象は、お化け屋敷(笑)。2階の縁側、まちや山が見渡せる立地、空気のよさはとても良かったですが、古くて壁の一部に蔦(つた)が這っていたうえに、床も傾いていて『ここに住めるん?』と」。そう振り返る麻紀さん。

DIYをする前の家の様子

一方で信幸さんは「いける」と確信していたそうです。二人が出会ったのはワーキングホリデーで滞在していたオーストラリア。現地の人たちがDIYを楽しんでいて「自分でできるんや!いつかやってみたい」と驚いた経験が心に残っていました。

子連れで通い、子どもを抱っこしながらDIY

決め手になったのは、相談した建築士である『連・建築舎』の伴現太さんが、具体的なリノベーションプランを提示してくれたこと。業者に任せる部分と自分たちで手を入れる部分が分かり、イメージが湧いたことで、半信半疑だった麻紀さんは「できる気がした」といいます。

参道沿いであるがゆえに家の前が階段で、敷地内に駐車場もありません。それでも、眺望に魅せられた二人。また、購入前に何度か内見に来た際、近所の人が親切にしてくれたり、子どもがたくさん住んでいるのを見たりして、周辺環境の良さも気に入ったといいます。さらにDIYを楽しめる物件でもあったので、2013年に購入しました。

その年に次女が生まれ、翌年から賃貸アパートから通いながらDIYを進めました。目指したのは、気に入った2階の縁側の雰囲気を生かした、和風で自然素材の家。DIYのやり方は、建築士の伴さんに聞いたり、YouTubeやテレビ、本などで調べたりして学びました。

DIY作業風景 DIYをした後の床

まず取り掛かったのは床張り。床板はネットで購入し、一枚ずつ切って、数ヶ月かけて1階全部と2階の一部に張りました。特に大変だった点を聞くと、麻紀さんは笑いながらこう話しました。「平日は一日置きで私が、土日はほぼ毎週夫と来て作業していました。平日はお弁当を持ってここまで来て、長女をベビーカーに乗せ、次女を抱っこしながら夕方まで作業して…。それと家の前まで車が入れないから、駐車場から材料を運ぶのも一苦労でした」。

細かい部分の作業や力仕事を担っていた信幸さんも「作業は楽しかったけど、終わりが見えなくて(笑)。DIYで通うのも大変でしたし、購入後はローンが始まり、賃貸の家賃もあるから早く引っ越したくて、1階の作業が終わればとりあえず住めるだろうと。とにかくコツコツと作業しました」と振り返ります。

大上さんご夫婦

家の傾きを補正するジャッキアップ、1階の間取り変更、水回りなどは工務店に任せ、1階の床張りと壁塗り、キッチンの天板設置、天井の和紙貼りを自分たちで行い、改修を始めてから3ヶ月後に引っ越しました。「2階部分のDIYは住み始めてから行いました。やはり住みながらDIYをするほうが断然楽だと後から分かりましたね(笑)。ご飯もつくれますし」と麻紀さん。

体を使って遊び、成長する子どもたち

家のほかに手を加えたのが、高い石垣があり、大きな石がごろごろして暗い雰囲気だった庭です。庭師に依頼しようとしたものの、2社に「材料や道具の運搬ができないから不可能です」と断られたため、なんと信幸さんが大きなハンマーや石を使ってすべて砕き、整備しました。

大上さん宅のお庭

今では人工芝を貼って明るい雰囲気の庭に。きゅうり、トマト、ズッキーニ、オクラといった野菜も育てています。

さらに、この庭と信幸さんのアイデアが子どもたちに新しい体験をもたらしました。自ら育てた野菜を家庭内で販売するという「農家・八百屋体験」です。

トマトの収穫

「収穫のたびに子どもたち3人の小さな八百屋が開かれます。売り上げ金は貯金箱に入れて、夏が終わったら3等分します。つまり共同経営です(笑)。庭が完成した2020年から始めて、その年は2000円くらい売り上げていました」と信幸さん。

子どもたち3人の小さな八百屋

子どもたちは、この家で体を動かしながらぐんぐん育っています。「柱に登ったり、1階につくったブランコに乗ったり、部屋で体を使って遊びます。家の前の参道で手づくりの竹馬などで遊ぶことも。足腰が強くなり腕の力もつきました。それに、私たち両親が『ないものはつくろう』と何でもつくるので、子どもたちも木、段ボール、のこぎりや釘などを使ってものづくりをするようになりました」と麻紀さん。

家の中のブランコ

二人はここに住み始めて何を感じているのでしょう。「朝うぐいすの鳴き声で目覚めたり、窓の外の景色が霧で真っ白になる日があったり、ほかにも蝉や鈴虫の声、冬の吹き下ろす風など、季節や自然をより感じられるようになりました」。

子どもたち同様、家もまだまだ“成長中”。仕事や育児の傍ら、毎年少しずつ手を入れています。2021年には、2階に子ども部屋をつくったばかり。「今後は物置になっている2階の納戸を部屋にしたり、天井裏をきれいにして秘密基地のようにしたい」と信幸さんが話すと、「それで完成する?」と麻紀さんが微笑みました。

これからも伸び伸びと住まう一家を、この家が支えていくのでしょう。

(2021.10.28)

いいサイクルはじめよう、いこまではじめよう

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