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【いこまのすまいTOPICS】生駒市在住の一級建築士・金井亮さんに聞く、理想の住まいの見つけ方

一生のなかで最も大きな買い物と言われる、マイホーム。
理想の住まいに出会うために、どのような手順で、何を考えて探していけばいいのでしょうか。
生駒市在住の一級建築士『and design株式会社』の代表取締役社長を務める金井亮さんに、考え方のコツやノウハウについてお聞きしました。

金井亮さん
奈良を拠点に、注文・店舗・オフィスなどの建築設計を行う建築設計事務所『and design株式会社』の代表取締役社長。市の空き家対策の取組『いこま空き家流通促進プラットホーム』にも携わる。

 

はじめに

本当に自分たちらしい「住まい」とは?

最も重要なのは、「どういう暮らしがしたいか」

住まい探しをする場合、何から、どのように始めればいいのでしょうか。

「はじめに、一般的に良い・悪いといわれている条件が、自分たちにとって本当にそうなのか、考え直して頭を整理してみましょう。例えば、駅から遠くても、車があるから問題がないといったケースです。冷静にいろいろな角度から生活を見つめなおすと、本当に必要な要素が分かります。必須条件のほか、住む期間、毎月の固定費、子どもがいれば独立後の暮らし方などを客観視すると、自分たちに合う住まい像が見えてきます。

最も重要なのは、『どういう暮らしがしたいか』。理想の暮らしとは何か、考えて住まい探しをしましょう。また、住まいによって暮らしは変わるので、候補物件が見つかったら、「どうやって暮らせそうか」も考えましょう。その家に住むことでどのような暮らしが生まれるのか、ぜひイメージしてみてください」

 

いざ、住まい探し

手順とコツをおさえて、よりスムーズに


金井さんが教えてくれた、住まい探しのステップとノウハウです。

STEP1:知っておきたいお金のこと

人生にかかるお金を知るライフプランニング

家族構成やそれぞれの年齢、入学などのイベント、何歳まで働くかなどを考慮したライフプランニングをしましょう。自分で考えるのがむずかしい場合は、税金・保険・年金などの知識を持ち、ライフプランの設計を行うお金の専門家・ファイナンシャルプランナーに依頼するのがおすすめです。工務店などが主催する、ファイナンシャルプランナーに無料相談ができるセミナーなどもあります。

希望している地域の相場を知る

希望している地域の相場を知りましょう。不動産・住宅情報サイトなどで検索するとおおよその相場がわかります。また、各サイトの情報が総合して掲載されるアプリ「ランディ」も、おすすめです。

STEP2:話し合って優先順位をつける

条件の優先順位を決める

夫婦や家族で話し合い、優先順位をつけましょう。STEP1をもとに、「なくても我慢できること」がないかも話しておくと、物件選びで迷うことが減ります。

新築か中古か。1000万円ほど差が出ることも

新築か中古のどちらにするかを決めます。マイホームとなればまず新築を検討する人が多いかもしれませんが、今はさまざまな材料の価格が上がっていて、新築の場合は数年前よりも300〜400万円アップしています。
中古の家を解体して新築注文住宅を建てる場合と、中古物件を購入してリノベーションする場合では、リノベーションの内容によるものの、1,000万円ほど後者のほうが安くなります。

中古は昭和期に建てられた物件も視野に

中古の場合、古民家を希望する人は多いですが、売り出される数は少ないのが現状です。現在はシニア層が戸建てのマイホームから駅前のマンションに引っ越したり、介護施設に入ったりすることも多いため、今後は昭和期に建てられた物件が多く売り出されることが予想されます。生駒でも昭和50年~60年代の宅地開発で建てられた家が多くあります。昭和期の家は古民家よりも安全面やコスト面でハードルが低いので、視野に入れてもいいでしょう。

耐震・断熱をどこまで求めるか

耐震や断熱性能をどこまで求めるかにより、改修費が大きく変わります。日本にはそれらの性能を示す等級があり、耐震等級は3〜1で3が最高等級、断熱等性能等級は7〜1で7が最高等級です。
耐震等級1では、震度6~7の地震で倒壊はしないものの、一定の損傷を受ける可能性があります。耐震等級2以上は、災害時の避難所として指定される水準です。

「絶対に最高等級がいい!」などとこだわりのある人に、リノベーションはおすすめしません。中古物件で完璧を求めると、改修費が高額になり、結果的に新築と総額があまり変わらなくなるケースが多いからです。
断熱のおすすめは、生活で最もよく使う部屋を中心に「局所断熱」をすること。昔の家は窓が多いため、一部の窓を壁に改修して断熱性能を上げる方法もあります。

▲耐震補強をしている柱

STEP3:気になる土地や家を見つけたら

住まいの総予算を知る

気になる土地や家を見つけたら、金融機関の事前審査を受け、ローンがおりるかどうかや金額を確認します。事前審査は本審査とは違い、工務店が決まっていなくても受けられます。自己資金なども含めて総予算を知ることができ、購入や改修の話を具体的に進めやすくなります。「頑張れば購入できるかな」「これだと無理なく返済できそう」「この総予算なら○○はつくれるのかな」などと考えましょう。

「検査済証」があるかどうかをチェック

中古物件では、建物の完成後に行われる完了検査に合格すると発行される書類「検査済証」があるかどうかがポイントです。これは「図面があり、図面通りの建物が完成した」という証拠になります。
昭和50〜60年代の建物は、図面や「検査済証」がなく、「構造などが何もわからない」というケースも。図面をおこすのに5〜6万円、調査費を含め合計50万円ほどかかるので、それを支払う価値がある家なのかを考えます。

解体や擁壁工事の費用も含めて「土地価格」

見落とされやすいのが、解体と擁壁(※)工事の費用です。古家を解体して新築する場合や擁壁の改修が必要な場合は、それらを含めた金額が本当の土地価格になります。更地ではなく古家つきの土地が多く出回っていることや、生駒市内には高低差がある地域が多いことを覚えておきましょう。一般的には35坪(約116㎡)の木造住宅を解体する場合、200〜250万円の費用がかかります。

※擁壁(ようへき)とは、高低差のある土地で斜面の土が崩れるのを防ぐために設置する壁状の構造物のこと。

外構を考えてから内装を考えよう

外構とは、駐車場、塀や門、庭、植栽、アプローチなど、建物の周りのこと。駐車場を2台分に広げる、庭の植栽を変える、外壁を塗り直すなど、外構を工事する場合、かなりの費用がかかると考えておきましょう。総予算から土地価格と外構費を差し引いた分が、家や内装にかけられる予算になります。外構を考えず、あとで困らないように注意しましょう。

 

さいごに

リノベーションの考え方

リフォームとリノベーションの違いとは?

住まい探しの手順とコツがよく分かりました。改めて、中古物件の良さとは何でしょうか。

「大きく二つあります。一つが、STEP2でお伝えしたように、料金面のメリット。これはとても大きいと思います。もう一つが、環境面への配慮です。

私は、スクラップアンドビルド(建物を解体・廃棄し、新しく建て替えること)をしてつくる断熱性能の良い家よりも、既存のものを活用した家こそがエコになると考えています。特に中古物件をリノベーションし、建具をできるだけ残して廃材を出さないよう工夫した家は、一番エコになると思います」

中古物件の改修でよく耳にする、リフォームとリノベーションの違いとは何でしょうか。

「明確な定義はありませんが、床やクロスだけ張り替える程度がリフォームで、かかる費用は500万円未満。より大掛かりな改修がリノベーションだと考えています。

風呂・キッチン・トイレを新調する場合、500〜1,000万円程度のケースが多いです。リフォームでは建築士は必要ありませんが、水まわりを移動するケースなどでは部分的に建築士に依頼してDIYと組み合わせるといいでしょう。32〜33坪(約106〜109㎡)の建物のリノベーションは、一般的に1,000〜2,000万円かかります。

リノベーションは、建築士に総予算を伝えて依頼するのがおすすめです。もちろん工務店に依頼することもできますが、間取りなどを大きく変える設計を得意としない会社もあります。事前に施工例などを見ておきましょう」

リノベーションの内容を決めるとき、どんな風に考えたらいいでしょうか。

「基本的にはリノベーションする場合、『完璧な住まいはない』と考えましょう。そのうえで、どこに注力して居心地のいい空間をつくるか、メリハリをつけます。例えば、リビングで過ごす時間が長ければリビング空間に力を入れるなど、どこに重点を置くか、ぜひ考えてみてください。

また、手間がかかるものをどれだけ受け入れられるかもポイントになります。すべてに便利さを求めなくてもいいと思うんです。例えば、庭の天然芝は人工芝よりも安い代わりにメンテナンスが必要です。でも『草刈りを楽しもうかな』と考えられれば、その手間を受け入れられるでしょう」。

 

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2023.03.29 UP

いいサイクルはじめよう、いこまではじめよう

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