念願の平屋を改修。広いLDKや建具などにこめた、家族とつながる工夫
平屋の中古物件を購入し、間取りの変更や庭の大改造などを経て3人で住まう北垣内さん一家。住宅設計のプロならではの、素敵な住空間に暮らしています。
overview
居住者構成 3人 | 以前の住まい 大阪府四條畷市 | 居住開始 2020年 | 木造 | 敷地面積 313.53m² | 延床面積 106.46m² | 建築 1982年
profile
大阪府堺市出身の北垣内誠幸(きたがいと・ともゆき)さんと、兵庫県たつの市出身の陽子さん。誠幸さんは住宅工務店、陽子さんはハウスメーカーでともに住宅設計の仕事をし、1歳の長男、犬のチリンちゃんと暮らしています。
一階だけで生活が完結する、平屋の贅沢感が好き
阪奈道路生駒インターチェンジから車で約4分のところにある光陽台は、1970年代に入居が始まったニュータウン。現在、約500人が住んでいます(2022年2月時点)。小高い場所に開かれた住宅地になっているため、見晴らしの良さが魅力の一つ。また、光陽台中央公園などの3つの公園や、桜並木などもある緑豊かな住環境です。
そんな光陽台に引っ越してきたのが、北垣内さん一家。緑あふれる開放的な庭と駐車場、そして平屋であることが特徴の住まいです。
特にこだわったのが、平屋だったそう。「一階だけで生活が完結する平屋が好きで、昔から住むのが夢でした。子どもが別の部屋にいても様子が分かりやすいし、掃除も楽だから暮らしやすいだろうなと。将来子どもが増えたときのために一階だけである程度の部屋数があるとなると、広い敷地がないといけないので、その贅沢感も好きなんだと思います。家の中は、仕事柄、リノベーションすればなんとでもなると分かっていたので(笑)、まずは平屋!と思って」。二人はそう話します。
ネットで検索していてたまたま見つけたのが、この家でした。誠幸さんは「犬や子どもが自由に遊べて家庭菜園もできるような広い庭と家の目の前に車2台を停められる駐車スペースが欲しかったんですが、まさにここは条件にぴったりでした」と話します。二人はピンときてすぐに現地を訪れます。
「一目惚れでした。玄関のかっこよさをみて『わ、素敵!』と。特に庇(ひさし)が昔の家や古い旅館のような雰囲気で気に入ったんです。今こういう家を建てようと思っても、その技術をもった大工さんが少ないのでむずかしいと思います。こういう家をあえて選びたいなと思いました」。そう話す陽子さん。古き良きデザインが好きだからこそ、中古物件に惹かれていたそうです。
誠幸さんも「こんなに庭が広いところは、都会で見つけるのはむずかしい」と、ここを気に入りました。他のエリアも少し考えていたものの、通勤に一時間以上かかるところばかり。当時は大阪府四條畷市に住んでいたので、生駒は隣です。「大阪との“ちょうどいい距離感”も決め手になって、購入を決めました」。
唯一、気がかりだったのは小高い場所にあるがゆえの高低差だったそうです。「坂道が多く、けっこう急なんです。将来、子どもが自転車に乗って移動するようになったら、この坂はしんどいな…と。でも慣れるのかなって。メインの移動手段が車ですし、子どももあっという間に大きくなるだろうから『まぁいっか!』って思いました」。陽子さんは笑いながらそう話してくれました。
間取りを大きく変更し、24帖の空間をつくる
住宅設計の仕事をしている二人は、理想の家をつくるのにリノベーションは欠かせないと考えていました。購入を決めた後、誠幸さんが引いた図面をもとに現場を見て話し合い、陽子さんが図面を修正していったといいます。
最も大きなリノベーションは、和室2室とダイニングの間の壁を抜き、24帖という広いリビング・ダイニング・キッチン(LDK)をつくること。大人数で囲める大きなダイニングテーブルを置くための二人の強い希望でした。「平屋で3部屋の続き間があったので、これをうまく活かそうと話しました」と陽子さん。
もともと同じ会社に勤めていた二人には、共通の知り合いの業者や職人が数多くいました。そこで、知り合いの専門業者、解体屋、大工、建具屋に希望を伝え、それぞれ発注していったのです。まるで二人が工務店のようだったとか。
一方、自分たちで手がけたのは、LDKの床張り、すべての壁の漆喰塗り、キッチンに置く作業台、庭の縁側づくりなど。「私は当時妊娠中でしたが、漆喰塗りには参加して、産後にも授乳の合間に続きをやりました」。そう明るく話す陽子さん。住宅設計のプロだからこその特殊な方法が多いそうです。
一般の人でもできるようなノウハウがあるか尋ねると、誠幸さんは次のように教えてくれました。「ホームセンターには工具の貸し出しや木材カットなどのサービスがあり、便利です。フローリング材はネットで材木屋さんから購入しました」。誰でも取り入れることができそうです。
「でも床張りは大変で、1ヶ月くらいかかりました」と苦笑する誠幸さん。24帖と広いため床材が長くて多い上に、家が古いので地面と床が平行ではなく隅に隙間ができて処理に手間がかかったそうです。
庭は、家を囲っていたブロック塀を業者が解体し、2台分の駐車場を確保してコンクリートを敷いてもらい、メッシュフェンスを立てました。フラットに整備後、誠幸さんが芝をはったそうです。新たに植えたのは、常緑樹で見た目が二人の好みのシマトネリコ。これで、庭が開放的で明るい空間に様変わりしました。
平屋の住みやすさ、自然環境など「ここでよかった」
住み始めて二年ほど経った今、二人はこの住まいをどう感じているのでしょう。「ニュータウンって、30、40年前に利便性のいいところを開発してつくられたものなんです。だから、坂こそあるものの、これから新しくつくられるところよりも住みやすいと思っています」と、誠幸さん。
陽子さんはこう語ります。「『ここでよかったね』って話しています。平屋は階段がなく水平移動だけなので掃除や洗濯などの家事がスムーズにできますし、子どもに呼ばれてもすぐ走っていけます(笑)。家族のコミュニケーションもとりやすいと感じています」。
また、窓が大きく、電気をつけなくても明るいため、遊びに来た友人や両親に「明るくていいね」と言われているそうです。「とても静かで、聞こえてくるのはふくろうなどの野鳥や虫の声くらい。季節に応じて桜や紅葉などを楽しめるところも気に入っています。それほど自然豊かなので、朝起きて息子と庭で過ごす時間が心地いいです」。
その庭に、これから秘密基地のような遊び場をつくりたいと楽しそうに話す二人。陽子さんは妊娠中で、まもなく家族が増えるそうです。ますます賑やかになる北垣内家の暮らしに合わせて、庭や部屋もその姿を変えていくのでしょう。
(2022.03.28)