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庭をリビングのように使い、寛ぐ。緑あふれる環境を生かした住まい

広い庭付きの中古物件を購入し、大掛かりな改修を経て4人で住まうベルトッリさん一家。庭や家からの景色を含めて「住まい」を満喫しています。

overview

居住者構成 4人 | 以前の住まい 生駒市 | 居住開始 2017年 | 木造・2階建て | 敷地面積 1010m² | 延床面積 117.43m² | 建築 1977年

profile

ジャンルカさんはイタリアのミラノ近郊出身で、各国のホテルレストランでの勤務を経て1996年に初来日。現在も飲食関係の仕事をしています。史子(ふみこ)さんは奈良市で生まれ育ち、高校卒業後から生駒市へ。高校生の長女、小学生の長男、うさぎのコニーちゃんと暮らしています。

イタリアでは、住まいは自ら手入れするのが当たり前

生駒市あすか野は大規模な住宅地。1970年代から入居が始まったニュータウンでありながら若いファミリー層も多く、約4,600人が住んでいます(2021年12月時点)。緑豊かなエリアで、小高い山の頂上付近に住まうのが、ベルトッリさん一家です。

「周りは山ですが、家の目の前にバス停があって生駒駅まで15分ほどで行くことができ、車で少し行けばスーパーもあります。自然豊かなところなのに、市街地に住んでいた頃と同じような利便性を感じています」。そう話すのは、史子さん。

ジャンルカさんと史子さんは結婚後、生駒市内にある史子さんの実家や、西白庭台にある賃貸の戸建て住宅などに住んでいました。ジャンルカさんは「国内外の各地で仕事をしていたので、家を買うなんて考えていませんでした。でも、自分のものにはならない賃貸住宅は金銭面でもったいないですし、私のこだわりもあって、都会に近く住み慣れた生駒市で家を探すことにしたんです」と話します。

ジャンルカさんのこだわりは、現状を活かしつつ自分たちの好みに改修できること。「イタリアでは壁を塗り替えたり、修繕をしたり、住まいの手入れは自分でやるのが当たり前という文化があります。面倒だなんて思わず、それを楽しむんです。だからこそ私も完成された家ではなく、改修する前提で探しました」とジャンルカさん。史子さんもその価値観に共感し「自分でやれるならいいね」と考えたそう。

ほかに二人が望んだ条件は「自然豊かなエリアの庭が広い家」でした。家がぎっしりと立ち並ぶところではなく、緑あふれる環境で、家と家の間にゆとりがある、そんなゆったりとしたところを望んでいたのです。屋外も楽しめる環境をつくり、庭で過ごしたり、家の近くで子どもと遊んだりしたいと願ったからでした。

2014年から探し始めたものの、理想的な家にはなかなかたどりつけませんでした。約3年かけて、なんと40軒ほど内見しても決まらなかったといいます。

家探しで最も苦労したのは、妥協せずに予算内でベストな家を探すことでした。安価な家は改修にお金がかかることが多いため、その費用も念頭に置かなければいけません。

「『この家にしよう』と決めないうちから業者さんに見てもらい、改修内容や費用を見積らないといけなかったんです。家の購入費用にその費用を足して総合的に検討する。それを気になった家すべてで行うのは大変でした」と史子さん。

二人は多くの家を内見するうち、改修のイメージが広がる家と、そうでない家があると感じるようになったそうです。

「どうやって生かそうか」と考えるのはおもしろい

なかなか終わらない家探し。実は、不動産業者が「おそらくここは『ない』と思いますが…」と連れてきてくれたのが、今の家でした。その家は、ジャンルカさんのこだわりと二人の条件をクリアしていたのです。

広い庭がある、元・二世帯住宅の大きな家でした。「『ここをこうしたい!』というイメージがたくさん広がりました。外での過ごし方や、庭に手を加える様子が想像できたんです」と史子さん。

「この家からの緑あふれる開けた景色が最高だと思いました。山の斜面にあるからこその景色でしょうね」とジャンルカさん。史子さんも見晴らしと風通しの良さを気に入ったといいます。

二人は2017年にこの家を購入。数ヶ月をかけて改修します。

「庭や家が大きいとメンテナンスが面倒だと考える人もいるでしょうけど、僕は楽しいものだと思っています。日本の一般的な感覚と、僕たちの『これがいい』という基準が違うのかもしれません」とジャンルカさんは話します。史子さんも「斜面など、多くの方が『これは無理』と考えるようなポイントを、私たちは『どうやって生かそうか』と前向きに考える。それがおもしろいんです」と微笑みます。

はじめに家の西側の半分強を解体して減築しました。改修は可能でしたが、「そこまで部屋数は要らないし、それよりも庭を広く取りたい」と減築を決めたそうです。残った東側の部分は、壁と床張り、水回りのリフォームを業者に依頼しました。さらに、1階の大きな部屋を区切ったり、分かれていた2部屋を広いリビングにしたり、2階の和室を洋室にして子ども用のクローゼットをつくったりするなど、間取りも変更しました。

ジャンルカさんが自ら手掛けたのは、外壁のペンキ塗りと、屋根の防水処理とペンキ塗り。「やり方は業者さんに教えてもらいました。そんなに難しくない作業で楽しかったですし、『僕の家をつくった』という誇りにもなります。フェンスなどまだやりたい部分はありますが、90%は出来上がったかな。未完成だからこそ、自分たちで手を入れられる余地がたくさんあります」。

また、リフォームやDIYをしていけるのが中古住宅のおもしろさだとジャンルカさんは考えています。「素人ですから、一から新築の家をつくるのはイメージしにくいしけれど、建った家を見ながら『ここを大きくしたら?』『ここにこれをつくりたい』などと言えるのはわかりやすいし、楽しいんです」。

食事や読書など、庭をリビングとして使う

いざ住み始めると、ゆずれなかった条件以上の魅力を感じ、さらにこの家が気に入ったという二人。何を感じたのでしょうか。

「空の色がきれいで景色が美しくて、澄み渡っていたり、雲海が広がったり…、季節や時間帯によって変わるんです。特に夕焼けは美しいです。リビングのカーテンは開けっぱなしにして眺望を楽しんでいます。毎日帰宅するたびに『この家は最高!』って思いますよ」と笑うジャンルカさん。

史子さんは、聞こえてくる野鳥の声を気に入っているといいます。「朝、野鳥の声で目覚めたときにはびっくりしました。長く生駒に住んでいても、そういう経験は初めてでしたから。家からバードウォッチングができるので、どんな鳥なのか興味が出て野鳥図鑑を買い、子どもたちと『これは何の鳥?』『この鳥が来たから夏が終わるね』などと話しています」。

お子さんたちは「庭が一番のお気に入り」と話します。バドミントンやサッカーをしたり、夏は家庭用プールで水遊びをしたりして遊んでいます。芝生に寝転んで宿題やゲームをすることもあるそう。

「屋外も楽しめる環境を」と願っていた史子さんは、それに満足しているといいます。「子どもたちは虫が来ると騒ぎつつも(笑)、季節を感じたり一日の中でも変化する空や光を感じたりして楽しんでいます。ときどき出かけて自然に触れるのではなく、日常で共存できているのがいいですね」。

自然と庭で過ごすことが多くなり、「家の中と外の境界がなくなった」と話します。家より外のほうが過ごしやすい気温であることが多く、家族で食事をしたり、読書をしたりしているのだとか。

「友人とバーベキューをすることも多いです。これから水に強い家具を揃えて、柱と屋根だけの小屋を建てて、庭をよりリビングみたいにしていけたらいいなと思っています。野鳥のためのえさ台や水場もつくりたいですね。広い玄関ホールを部屋のように使えないかなと考えたり、薪ストーブにも憧れたり。入居して4年が経とうとしていますが、まだまだ未完成で、日々いろいろ考えをめぐらせるのが楽しいです」。

今の住まいに満足している二人が、これからやりたいことやつくりたいものを話すとき、その瞳は一層輝きます。将来は庭に二人が住む小さな家を建てて、今の家は子どもにあげてもいいと考えているそうです。家や庭が育っていくほど、家族の思い出も増えていくことでしょう。

(2022.01.28)

いいサイクルはじめよう、いこまではじめよう

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