
スポーツがつなぐ地域と暮らし
生駒で10年以上活動する、総合型地域スポーツクラブ「リトルパイン」。会員は400名を超え、スポーツ教室以外にも農園や英語クラブ、シニア向けの健康麻雀教室、事務所の一角をカフェとして地域に開くなど幅広く展開しています。どのように地域に根づき、活動を発展させていったのか、お話を聞きました。
松岡岳史さん
滋賀県出身。4人の子どもを育てながら、大阪府出身の聖子さんと夫婦でリトルパインを運営。共通の趣味はスキー。緑ヶ丘自治会長を務める。
生駒と総合型地域スポーツクラブとの出会い
夫婦そろって出身は県外。どのように生駒との縁ができたのですか?
冬はスキーインストラクターをしていたため、夏は生駒にあったスキーショップで働くことになり、引っ越してきたのがきっかけです。その間にスキーインストラクターの資格試験会場で知り合った妻と結婚し、生駒に20年ほど住んでいます。
会社勤めをしていたとき、義父が体調を崩しました。退職後、家にこもりがちな父に、妻が外に出る機会を作って、何か運動をさせたいと思っていたとき、当時季節を問わずできるスポーツとして流行り出していたノルディックウォーキングを思いつきました。短い距離から歩くことを始めてみると、どんどん元気になっていく姿を目の当たりにしたんです。それまで、私たちはスポーツは競技としか捉えていなかったのですが、「スポーツは人生を変えるものにもなり得るのかもしれない」と大きな可能性を見いだしました。
そのような父の姿を見て、ノルディックウォーキングをどうすれば広められるかを妻が考えるようになりました。自分ひとりでできることに限界を感じて生駒市役所へ相談に行ったとき、やりたいことを叶えるための手段として、現在のスポーツ振興課長の西さんから、総合型地域スポーツクラブを紹介されました。初めて聞きましたが、「おもしろそう!」と感じ、手探りでリトルパインをスタートしました。

地域の暮らしに溶け込むクラブへ
「総合型地域スポーツクラブ」とはどのようなものですか?
子どもから高齢者まで多様な人が、身近な地域で様々なスポーツを楽しめるスポーツクラブです。リトルパインでは、キッズゴルフや放課後の送迎・夕食つきのスポーツ教室、自力整体教室といった教室を45クラス以上展開しています。また、楽しみ志向の人から競技志向の人まで、それぞれの年齢・興味・体力・技術などに応じて参加できます。何より、地域住民が運営するのが最大の特徴ですね。
多種多様なクラスを開講されていますが、どのように生駒で展開していったのですか?
設立から、地域のみなさんに支えられています。例えば、教室運営のお手伝い。生駒で暮らす年配の方が参加者の子どもを見守ってくれたり、保護者がイベントの受付を手伝ってくれたり。他にも、「こんな教室ができたらいいな」と話していると、誰かがコーチを見つけてきてクラス開講に至ったこともありました。市のスポーツ振興課が、学校に「市の施策」としての総合型地域スポーツクラブ育成とその意義を説明し、理解ある環境を作ってくれたことも大きかったです。ありがたいことに次から次へと協力者が現れました。


ここまで地域の人を巻き込めている秘訣は?
ソフトボール大会や祭りの神輿担ぎなど、地域行事に誘ってくれる方がいて、そこから少しずつ地域を知るようになりました。僕たちは生駒が地元ではなかったからこそ、活動を始められたと思います。今考えれば、よくこんなにも勢いよく動けたなと思います。
また、生駒は、他の地域から来た人を受け入れてくれる文化がありました。住んで思ったのは、心に余裕がある人が多いこと。だから、こちらからのお願いも快く受け入れてくださる素地がありました。「生駒のまちは活動的で、地域のつながりがとても強い」とも感じています。
地域の子どもたちがつなぐ未来を目指して
地域クラブを行う上で大事にしていることは?
スポーツの上達が一番の目的ではなく、多世代に楽しんでもらうこと。スポーツの敷居を低くしたいので、単発の教室を作ったり、手続きを一本化したりしています。また、スキル向上とは違ったやりがいを見つけてもらうことにも重きを置いています。
例えば、引っ込み思案な子の「やりたい」をサポートしたとき、その子は最終的に発表会に出られるまでになり、学校生活でもどんどん積極的になっていきました。
スキーキャンプでは家族や学校とは違ったコミュニティに入るため、いつもと違う一面を見せたり、積極性や協調性が出たりした子も。子どもたちの目線に合わせて、広い視野で子どもたちの成長を追いかけられるのも、地域の人たちと子どもたちの成長の話ができるのも良いですね。


今後目指すところをお聞かせください。
設立当初に通っていた子どもたちはもう高校生。指導を受けていた子が、もうすぐ指導できる年齢になります。もしかしたら、一度は生駒を離れてしまうかもしませんが、いつかまた戻ってきて、指導する側に回ってくれたらいいな、なんて思っています。地域の子どもたちがこのリトルパインを次の世代につないでいって、代替わりしても地域で愛されるクラブであり続けるとうれしいですね。
(2025.1.27)
ライター:いこまち宣伝部5期生 田村るみ/ カメラマン:いこまち宣伝部6期⽣ 中村京子

WRITER 田村るみ
ボランティアや仕事で国内外を転々をしたあと、結婚・出産を経て生駒へ戻る。ひさしぶりの地元で人とのつながりを求めていこまち宣伝部に。家族との時間を大切にしながら、産後ケアの充実を通して生駒をもっと住みよくしたいと妄想中。(いこまち宣伝部5期生)
PHOTOGRAPHER 中村京子
1977年、釧路市生まれ。松江・広島・福岡・大阪など様々な土地で暮らした後、2018年から生駒市在住。学生時代の専攻は視覚心理学。人と自然とクラシック音楽が大好き。(いこまち宣伝部6期生)