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週末はコーヒー屋。僕の二つの仕事

理学療法士とコーヒー屋という二つの仕事を持つ大村豊さん。手作業を重ね、ていねいに仕上げているコーヒー豆への思いや、大切にしているものについて聞きました。

大村豊さん

京都府出身。奈良にある大学へ通ったことで、奈良との縁ができる。大学卒業後、病院に就職し、理学療法士として働く。現在は訪問リハビリテーションに異動し、週に4日働く一方、自家焙煎のコーヒー豆を販売する『やどりか珈琲』の活動もしている。6歳と2歳の2児の父。

澄んだ味で体になじむコーヒーを提供したい

まず『やどりか珈琲』について聞かせてください。特徴の一つが自家焙煎だと思うのですが、レトロな焙煎機ですね。

国産の真鍮製のハンドロースター(手回し焙煎機)です。

焙煎は、豆の水分を適切に抜くために行うものです。僕は、焙煎前に、割れた豆などを手作業で取り除くハンドピックという作業をします。これをすると、飲んだときの雑味がなくなるんです。ハンドロースターの温度を上げてから豆を投入します。温度と焼き色、においを確認しつつ、ずっと手で回すと、しわしわだった豆がふくらんで、黒く色づいていきます。

一回の焙煎に約30分かかりますが、僕の個人的な適量が500g。生産性はないですよ(笑)。これを週に一度、自宅で一日4、5回繰り返します。

手作業が多いのですね。においは何をチェックするんですか?

水分の抜け具合を確認します。水分が抜け切っていないと鼻につくようなにおいがするんですけど、それがどんどんクリアになっていくんです。この豆のにおいの変化が好きですね。

コーヒー屋の技や違いが一番出るのが焙煎です。そこをどうより良くするか、常々考えていますね。今も温度の微妙な変化を実験しながら、「もっとうまくできるんちゃうか」ってアップデートしています。

どういうコーヒー豆を提供していきたいですか。

豆というよりは、味かな。舌に残らず澄んだ味わいで、自分の体になじみ、かつ豆の味がよくわかるもの。豆の種類などで味は変わりますが、舌にあたって抜ける感覚は一緒だと思うんですね。そこを大事にして表現できたらいいなと。手間をかけても、おいしくなかったらだめですから。

コーヒーと出会わせてもらったこと、縁ですね

理学療法士の仕事の一方で、コーヒー屋の活動をしているのですね。

中学・高校は陸上部で長距離の選手をしていました。でも、高2のとき怪我をして走れなくなってしまって、せめてスポーツ業界に関われる職種はなんやろうと考えて選んだのが、理学療法士の仕事でした。大阪の病院で5年働いた後、奈良の訪問リハビリテーションの部署に異動して、今もそこで働いています。

上司の理解を得た上で理学療法士の仕事は週4日にしてもらい、『やどりか珈琲』としては木曜と週末に活動しています。

コーヒー屋の活動を始めたきっかけは何ですか?

始まりは、友達がコーヒーに目覚めたことでした。その友達一家と僕の一家は、生駒で一軒家を借りてシェアハウスをしていたんです。友達は突然「仕事を辞めてコーヒー屋になる」と言って、家で自家焙煎を始めました。

その彼が「ジャパンコーヒーフェスティバル」というイベントを立ち上げて、ある老舗のコーヒー屋さんが「当店の豆は、誰が淹れてもおいしい豆だから使ってください」と豆を提供してくれることになったんです。

友達から「ダイソン(大村さんのあだ名)、やったらいいやん!」と言われ、2017年1月、軽いノリで初めて参加しました。僕はコーヒーを淹れるだけの役目でしたが、そうやってコーヒーと出会わせてもらいました。自分から積極的に探しに行って出会ったものではないんですよ。ご縁ですね。

参加したら、お客さんとのやりとりがめちゃくちゃおもしろかったんです。コーヒーを淹れるプロセスにお付き合いいただいたら、人との距離が近くなるんやな、って。それからイベントに何度か参加して「焙煎から自分でやろう」となり、その年の6月、本格的に活動を始めました。いざ始めてみたら、仕入れや焙煎のプロセスも楽しいなと感じましたね。

理学療法士とコーヒー屋!?って思われるでしょうけど、僕のなかではその二つはつながっているんです。僕が学んでいた理学療法は患者さんとの対話を重視し、思考のプロセスを意識します。コーヒーを飲むまでのプロセスを大切にしたいという気持ちは、理学療法士の経験が影響していると思います。人も生み出される物も、結果よりそこに本質があるんじゃないかと。

ご縁やプロセスを大事にしているんですね。何かを始めたい人にアドバイスはありますか。

基本的に受け身です。でも何かを「やりたい」とセンサーが動いたら、小さなことでもいいので行動したほうがいいと思います。調べるだけでもいいんです。やらないと、その場で止まってしまいますから。その一歩はどんな種類でもいいんです。変化があれば、きっとおもしろくなってくると思いますよ。

『やどりか珈琲』は、僕の表現方法の一つ

屋号にはどんな思いが?

コーヒー豆は、僕の手元にくるまでにいろいろな人間、自然環境を経ているのでいろいろなものが宿っていて、そのプロセスに僕も入らせてもらっています。最後にそれを淹れて飲む人も何かを宿しているんです。だから「やどりの一杯を」と、コーヒー豆を渡すイメージで名付けました。『やどりか珈琲』の「か」は、場所という意味の「家」、「火」など、いろいろな字をあてはめられるので平仮名にしました。

今お客様で多いのは、生駒の方たちです。コーヒー好きの方が定期的に購入してくださっています。また、子どもの同級生のお母さんや、子育てサークルで知り合った方、イベントで知り合った方なども継続して買ってくださっています。

大村さんにとって、コーヒーに親しむ時間とはどんな時間ですか。

『やどりか珈琲』は、僕の表現方法の一つです。コーヒーとの関わりはストレスがないんです。自分がより出しやすい。そういうものがあるって、幸せなことやと思います。

(2022.02.04)

イベントでは、丁寧に淹れたコーヒーを提供。また、ドリップパック(1400円/10個)や、エチオピアなど世界各国のコーヒー豆(1500円〜/200g)の販売をしています。

イベントに出店する際は、必ず家族も同行し、一緒にその場を楽しんでいます。コーヒーを淹れたり、お客さんと交流したりする父親の姿は、子どもたちにとって見慣れた景色なのでしょう。

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