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食から子どもたちの居場所をつくる

子ども食堂『たわわ食堂』をはじめとした、子どもにまつわる複数の活動に熱く取り組んでいる溝口雅代さん。その優しいまなざしの根底には、どのような思いがあるのでしょう。これまでの歩みとともに、うかがいました。

溝口雅代さん

保育士。アメリカ合衆国カリフォルニア州立Jhon Swett High School、立命館大学、日本メディカル福祉専門学校を卒業し、現在は「小規模認可保育所わらべ学園」副園長に。

子ども食堂「たわわ食堂」や「フリースクール和草(にこぐさ)」などの活動も行う。

おいしいものを楽しむ“第三の場所”

「たわわ食堂」について、教えてください。

2016年から生駒市内で始めた、ボランティア活動です。食べものや料理を無料または低価格で提供する「子ども食堂」であり、自宅や学校、職場とは別の“第三の場所”でもありたいので「居場所食堂」とも呼んでいます。月に一度開催し、来たい人が自由に来て、いつ帰ってもいいんです。

若い人から年配の人まで7名のボランティアスタッフがいて、来てくれる人はさまざまです。近所のお母さんがおしゃべりしたり、子どもがよそのおばちゃんと和気あいあいとご飯を食べたり、親子連れがほかの親子と交流したり……、とにかくごちゃ混ぜの空間(笑)。唯一の共通点は「おいしいものを楽しむ!」ことです。

ありがたいことに、食材はほとんど個人や地元の企業から寄附していただいたもの。善意の輪が広がっています。

一般的に子ども食堂は貧困に悩む家庭のための活動ですが、こちらから「(生活に)困っていますか」といった質問は絶対にしないようにしています。「何かあれば言ってくださいね」と伝える程度。2、3回来て慣れてから話す人もいますし、年配のスタッフになら話しやすいという人もいて。それぞれが、この空間を役立ててくださっているのかなと。

人とのつながりやおすそ分けで温められた

どうしてその活動を始めたのですか?

実家が、生駒市と奈良市で私立幼稚園『わらべ学園』を経営しているんです。わたしは大学卒業後、そこで児童英語インストラクターの仕事をしていました。

子どもたちに日々接するなかで、30歳のとき「保育士になりたい」と思い、保育士の資格を取得したんです。その勉強中、いろいろな幼稚園や児童養護施設を見学し、食育を大切にしている園に行きました。幼い頃にしっかりご飯を食べている子は、思春期になっても精神的に安定している子が多いそうです。そこで初めて、食の重要性を痛感しました。

同じ頃、「子どもの7人に1人が貧困だ」と報じる記事を読み、子ども食堂の存在を知って、「基本的な生活が十分にできていない子どもに対して、食であればわたしにも何かできるのでは」と、2016年1月に「たわわ食堂」を思いついたんです。

わたしは子ども時代、母が仕事から帰る時間が遅かったので、よくお寺や駄菓子屋で1時間ほど話したり、近所のおばちゃんから「ご飯食べていき!」と言われて夕飯を一緒に食べさせてもらったりしていました。そういう人とのつながりやおすそ分けによって心が温められた経験が、自分の根っこにあったのでしょう。

思い立ったら即行動タイプで(笑)、3月には立ち上げました。準備中は、大阪・西成の子ども食堂を運営している方にノウハウを教えていただき、ポスター貼りなどの告知活動を地道にやりました。当時は子ども食堂を知らない人が多かったので、非営利活動であることやレストランとの違いを説明したり、開催する場所を探したりするのに苦労しましたね。

子どもたちの自ら育つ力を見守りたい

どのように参加者を集め、広めていったのでしょうか。

直接的に「食に困っている方、どうぞ!」と言うのではなく、「おいしいものを、安く食べてくださいね」と言いながら、周囲にPRしました。それだけではなく、届けたい人にどう届けたらいいのかを考えて、自作のチラシをポスティングなどで配りました。ときには、ナンパをしたことも(笑)。初回から、毎回50名くらい来てくれました。

3、4年経った頃、固定の場を持って子どもたちとより深い関係性になれたらと思うようになりました。子ども食堂をやっていても、貧困層の情報や民生委員が持っている個人情報はもらえないため、待つことしかできないからです。

そこで2019年に始めたのが「居場所駄菓子屋 たわわ堂」。イメージは、子どもの頃に入り浸っていた駄菓子屋です(笑)。子どもたちが集まって駄菓子を食べる、いい空間になっていました。新型コロナウイルスの影響から活動できない時期がありましたが、移動式販売車を提供してくれた方がいて、現在再開に向けて準備中です。

2019年に開催された「居場所駄菓子屋 たわわ堂」の様子。現在、地域の子どもたちが再開を心待ちにしているといいます。(写真提供:たわわ食堂)

あるとき、学校に通いにくい子と知り合って、そういう子たちの居場所づくりも大事だと考え、小学生から高校生を対象にしたフリースクールも開きました。生駒市内の学習塾『学び処 和草(にこぐさ)』の一角で、『フリースクール和草』を火、木、金曜の10時〜13時に開校しています。

仕事や活動に共通しているのは何ですか?

「子どもたちの自ら育つ力をニコニコと横で見守りたい」という気持ちです。これからもわたしなりに多世代をつなぎながら、子どもたちに寄り添い続けていこうと思っています。

(2020.09.06)

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