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まちと育む、自分に還る宿

「いつか日本でゲストハウスをしよう」。太田奈美さんと夫の安眞完(あん じんわん)さんは、日本各地を訪ね歩いた後、生駒市で滞在型のゲストハウス「鹿音〜kanon〜」を始めました。2人の宿は、まちと共につくる場になりつつあります。

太田奈美さん・安眞完さん

奈美さん:奈良県橿原市生まれ。10代を病床で過ごしたのち、旅の魅力に目覚める。結婚を機に27歳で韓国へ。大学で日本語講師として指導にあたる。
眞完さん:韓国・大邱(テグ)生まれ。受験戦争を経て、財閥系大企業へ就職。
2人は日々仕事に追われながらも、ゲストハウス経営の夢を持ち続けた。
https://jhousekanon.com/

自分だけの生駒を探して

ゲストはどこから訪れますか?

奈美:一番多いのは韓国、次いで大阪。国内外とも、近場から来られるんです。

海外のゲストは、夫が生駒での暮らしを綴るブログをきっかけに訪れる方が多いです。四季折々の生駒の風景、ゲストとのエピソード、飼い犬のランギについての記事をくまなく読んでくださるゲストもいて。生駒駅へお迎えに行くと「ランギ〜、やっと会えたね」と。

ゲストは何を求めて訪れるのでしょうか。

「ここに来たら日本のローカルに触れられると思って。今日はどんな過ごし方がおすすめですか?」と聞かれます。

日本のローカル?

わたしたちが提案するのは、ガイドブックに載らない生駒です。有里町は、いわゆる観光地ではありません。春になると田んぼに水を張り、夏は青々とした稲穂の間を風が抜け、秋に収穫を迎える。そんな「暮らし」のまちです。

ここで、あらかじめ用意されたコースを歩くのではなく、自分の気の向くままに過ごしてみる。

たとえば鹿音の近くにあるお寺へ向かう途中で、ふと棚田の風景に目がとまり、しばし見入る。あるいは近くの飲食店の暖簾をくぐり、店主と仲良くなって、「お土産いただいちゃいました」と鹿音へ帰ってくる。

そうして自分の時間を過ごすことで、「転職を決意できました」「やりたいことに向き合えました」と人生の節目を決断する人もいます。

12年越しで叶えた夢

どうして滞在型のゲストハウスを始めようと?

奈美:24歳のとき、ワーキングホリデー先のニュージーランドで、夫と出会いました。そして、ロトルアというまちで、2人にとって理想のゲストハウスに出会ったんです。

眞完:わたしたちは、家族のように受け入れてもらったんですね。オーナーは一緒に畑へ出て、夜は語らい、暮らしを丸ごと見せてくれました。さらには「母屋の鍵も預けておくよ」とまで。

日本以上の競争社会である韓国に生まれて、わたしは「いい大学に進み、財閥系大企業に就職することが幸せ」という価値観のもと、受験や資格取得に励んできました。ロトルアの宿で初めて「自分なりの幸せ」と向き合うことができたんです。いつかは彼のように、人を迎えたいと思いました。

その夢を持ちながら、それぞれに就職をしたんですね。

奈美:彼は、財閥系大企業で営業職に就きました。わたしは日本で英会話講師になった後、27歳で結婚し、韓国へ。大学の日本語講師になりました。日本の大学進学や就職を目指す学生は、ほんとうによく勉強するんですが、あるとき「この社会では自分を見つめる時間を持たせてもらえない」と言われて、考えさせられました。世間ではエリートと言われている夫も、朝早く出社して、深夜に帰宅する毎日でしたから。

夫婦で話し合い、他人が決めた生き方ではなく、自分たちの幸せをつくっていけたらと思い、ゲストハウスの夢に向かっていきました。30歳から6年間かけて、大型連休の度に北海道、長野、名古屋と物件を探し歩いたんですね。そしてとうとう、有里町の高台にある築120年以上の古民家と出会いました。

まちと育む場に

鹿音の始まりを教えてください。

2014年に、夫と2人で静かにオープンしたんです。大がかりな広報はせず、玄関に小さな看板を掲げました。滞在型のゲストハウスは、地域の方の理解あって営めるもの。第一に有里町の人たちとの信頼関係を築きたかったんです。

転機は訪れましたか?

2017年に、市民自らまちの魅力を発信する「いこまち宣伝部」の方が、Facebookページ「まんてんいこま」で紹介してくださったんです。おかげで市内に友人が一気に増え、デザインや経営に明るい市民の方とも出会いました。そうしてつながった人たちにも鹿音へ来てほしいと思い、2019年7月に料理や語学の教室を開ける2号館を始めました。

3週間に及ぶ改修期間中、生駒の方が入れ替わり立ち替わり訪れてくださったんです。夫婦2人で準備した5年前がウソのようで。一緒に汗をかいて障子を張り替え、壁を塗り、手製の韓国料理をみんなで食べると、鹿音がみんなのものになったような気持ちになりました。

今後、鹿音はどんな場所になっていくのでしょう?

訪れた人同士で、交流が生まれたらいいな。オープン以来、8回も来てくれた韓国のご家族がいます。「異文化交流」という言葉がありますが、出会いを重ねるごとに、国や言葉の違いよりも、将来の夢や家族の悩みといった共通点が見えてきます。そうして異文化の中の共通点に触れ合えたとき、人はとても豊かになれる。そんな瞬間を共有できる場にしたいです。

(2019.10.10)

生駒で暮らす人、おいしいお店、地元の行事。住んでいる人の目線でまちの魅力を発掘して、市内外に発信する市民PRチーム。2015年度から活動開始。主な活動にFacebookページ「まんてんいこま」、フォトブック「いこまの愛しい時間。」、生駒市PR動画「住みよさ まんてんいこま」。
Facebookページ「まんてんいこま」フォトブック「いこまの愛しい時間。」生駒市PR動画「住みよさ まんてんいこま」

生駒市のFacebookページ。生駒で暮らす人、おいしいお店、地元の行事。住んでいる人の目線でまちの魅力を発掘して、市内外に発信する市民PRチーム「いこまち宣伝部」の活動の一つ。
まんてんいこま

いいサイクルはじめよう、いこまではじめよう

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