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ご近所さんが、先生と生徒になれる時間

生駒市は、地域の人が歩いて集える自治会の集会所や公園などの地域拠点を活用し、新しい地域のつながりをつくる「複合型コミュニティ(まちのえき)」づくりを進めています。いったいどんな活動やつながりが生まれているのでしょうか。エッセイストのしまだあやさんが、西菜畑町(にしなばたちょう)を訪れました。

奈良に住み始めて6年目になります、しまだあやです。同じ奈良に住む者として、こうやってたまに生駒市を訪れ、まちのことを書かせてもらってます。どうぞよろしく。

今日は、西菜畑町の自治会が行う「おはなし会」の取材をするべく、自治会館に来ております。
なんだろうね、「おはなし会」。何の話をするんだろう。「より良いまちづくりについて」かな。いや、「最近うちに子猫がたくさん生まれて…」かもしれない。とりあえず入る。おじゃましまーす。

「私たちはまだ、生まれて1分しか経ってないんです」

「ごめんください。取材に参りました、しまだです」
「はいはい、ようこそ。どうぞ入って」

参加者は15人ほど。早速「おはなし会」が始まった。話し手は、西羅(にしら)さんという方。「3班の西羅です」っていう自己紹介がおもしろかった。自治会っぽいね。


早速、西羅さんがホワイトボードに文字を書く。今日の議題かな?

ん……?

「宇宙」??????

振り返った西羅さんが言う。
「そちらに、前にも来てくれた方がいますね。前回、何の話をしたか覚えていますか?」

向かいの男の子が答える。
「ビッグバンです!」

「そうでしたね。今日は、地球の誕生について話しましょう」

ちょ。ちょっっっっっっと待って。
自治会の「おはなし会」のテーマ、壮大すぎない??(笑)

隣の人に、小声で聞く。
「あの、このおはなし会ってどういう……」
「この地区に住む人同士で集まって、学校みたいに授業を開くんですよ。で、3班の西羅さんは宇宙に詳しいので、宇宙の先生なんです」

なるほど。「おはなし会」っていうから、てっきり町内会議みたいなことかと思ったら。

「宇宙の話は今日で2回目。さっき発言した子が宇宙好きで。それもあって、今回も西羅さんが話すことになったんです」

完全に理解しました。つまり「おはなし会」とは、ご近所さん同士が先生や生徒になる会。いや、めっちゃいい会じゃないか。

「ここでみなさんに質問。地球が46億年前に生まれてから今日までを1日だとします。僕たち人類が生まれたのは、何時くらいだと思いますか?」
西羅さんが聞くと、みんな小さい声でいろんな時間を言う。
「3時のおやつ!」「いやいや夕方くらいじゃない?」

「正解は23時59分。諸説ありますが、私たち人類はまだ、生まれて1分しか経ってないんです」

すごい、全然知らなかった。私、今日のお昼、おそうめんだったんだけど、アウストラロピテクスも、卑弥呼も、明石家さんまも、私がおそうめん茹でてる間に生まれてたんか。

自分が選んだ興味と結びつけて聞く授業

ひとつ、私の学校生活にはなかった、ユニークなシーンがあった。

学校の授業ってだいたい、「○○ページを開いてください」という先生の言葉で始まる。みんな同じ教科書や資料集を開き、そこに書かれた内容を元に話が進んでいく。でも、この「おはなし会」は違った。

遡ること30分。
集まった人たちは、「おはなし会」が始まるまでの過ごし方として、会館内の図書スペースを見ていた。そして、なんとなく気になった本を手に取り、座って読みつつ待っていた。

テーマが宇宙と知り、天体図鑑を手にとった人。好きなキャラクターの漫画をとった人。「懐かしい〜」と言いながら名作絵本をとった人。そして、そのままゆるりと会が始まったので、みんなの手元には、いろんな本があった。

途中、特に子どもたちは、じっとできる時間に限界があるので(笑)、手元にある本をめくり始める。かといって、本に集中しちゃうわけではない。地球の話になると「ここに惑星の絵がある」。プレートの話になると「日本地図のページあったよ」。中生代の話では、タイムマシンでジュラ紀に飛んで、恐竜たちとふれあう漫画のコマを見つけ出す。

つまり、通常は「教科書に沿って、先生が話す」だけど、逆に「先生が話す内容に沿って、本から関連してるところを探す」という流れができていた。自分の興味で選んだものと結びつけて、聞く。学び方としてすごく面白いな、と思った。

好奇心の種を届けるために

終盤、西羅さんから「質問はありませんか?」と声がかかる。子どもの頃は挙手するのが苦手だった私。今ならできそうなのでやってみる。

「はい! 先生はどうして宇宙に詳しいんですか? 宇宙に関するお仕事をされていたとか?」
「いやいや、全然違う職業だったよ。大学の一般教養で、地学を勉強してはいたけどね。まあ、シンプルに宇宙が好きで、本をずっと読んでるからかなあ」

「ま、あんまり読みすぎると、自分が宇宙に飛んでいきそうだから、程々にしてるんやけどね(笑)ほんとうに宇宙に飛んでいくような人が、すばらしい研究者になるんだと思う。だけど僕は、そうじゃなかった。せめて、今住んでるまちの子どもたちに、好奇心の種を届けるきっかけでもと思って、こういう活動をしているわけです。」

「どうしたら子どもたちが集まる?」を小学生に聞いてみた

「おはなし会」が終わったあと、この会を企画した西菜畑町の自治会長、稲葉さんにも話を聞いてみた。すると、「本を置いてみたり、こうしてイベントを開いたりと試行錯誤してるんだけど、思うように人が集まらなくて……」とお悩み中だった。

「今は、YouTubeとかゲームとか、いろんな学びの入口があるけれど、さっき西羅さんも話したように、本の力だってすごい。子どもたちには、もうちょっと本を読んでもらえたら嬉しいんだけど、全然来ないんだ。みんな外で遊んだり、ゲームするほうが好きだろうし……」

そんなことを話していると、隣に女の子が来て、自治会長さんの肩をぽんぽんと叩いた。
「ああ、孫です。ちょっとごめんね」

お孫さんの名前は「みみかちゃん」、小学4年生。なんだ、ここにアドバイザーがいるじゃないか。子どものことを聞くなら、子どもが一番の先生だよ。ということで、彼女にも話を聞いてみた。

「みみかちゃんは、今日はどうしてこちらへ? 宇宙が好きとか?」
「え……いやまあ、一応、孫として…(笑)」

「おじいちゃんさっき、どうしたらもっと子どもが来るかな〜って悩んではったよ」
「あー難しいですよねえ。西菜畑町はそもそも、子どもの数が少ないので」

聞けば、15人ほどらしい。そうかそうか。みんな、どこで何して遊んでるんやろう。

「最近はずっとドッジボールです。この辺りは、ちっちゃい公園が何個かあるんですけど、そのうちのどれかで遊んでます」

なるほど、ドッジボールか。そりゃ会館ではできないもんな。じゃあ、どの公園で遊ぶか決まってないときに『とりあえず会館集合で!』はアリ? 遊び場として使ってもらうのが難しいなら、待ち合わせスポット化させる。友達が来るまでの時間を過ごす場所的な。

「あー、それならありえるかも」

と、ここで、みみか先生から本棚の選書についてアドバイスが。

「学校の図書室で人気の本を調べてみて、ここにも置くとか?」
「おお、いいね。図書委員に聞いてみるとか、貸出カードが埋まってる本とか」
「全巻揃ってない本を調べるのもいいと思いますね」

揃ってない本? どういうことだろう。

「例えば、私が好きなシリーズ、16巻まであるはずなのに、揃ってるところを見たことないんですよ。2巻と3巻だけとか。次の週に行ったら、今度は10巻だけとか」

みんなが次々に借りてるのか。なるほど、それだけ人気があるってことだ。

「人気のシリーズは、本屋さんでもやっぱり前の方に出てて。新刊も揃えていくと、ちょっとは来てくれるんじゃないかな」

そういや、おもしろそうな本は多かったけど、確かにレトロ度高めだったな。

▲「二宮金次郎―農村をよくしようと努力した人(児童伝記シリーズ 10)」土家 由岐雄(著), 石井 健之(イラスト) 偕成社

「で、こういう本がありますよ〜っていうのを、子どもたちでポスターを作るとか。で、公園の掲示板に貼れば、他の地区の子も見るかも」

そうだ、公園に集まることはわかってるもんな。そこに自分の描いたポスターがあったら、「これ私らが作ってん」って、きっかけになるかもしれないね。

いやあ、すばらしい。西菜畑町自治会のみなさん、どうでしょう? みみか先生のアイデア、ぜひお試しください。

・・・

「おはなし会」の取材ということでやってきた、西菜畑町自治会。宇宙のことや、学び方のバリエーションが知れたことはもちろん、みみか先生との「おはなし会」も楽しかった。声、かけてみてよかったな。

まちの自治会活動って、そう簡単にいかないことも多いだろうけど、彼女のような、「こんなのもいいね」を語れる子どもたちがいることは、何よりの宝なんじゃないかな、と思います。

ということで、今日の取材はこれでおしまい。
みなさん、また会いましょう。みみかちゃんもありがとう。またね!

※しまだあやさんが書いた他の「まちのえき(複合型コミュニティづくり)」の記事はこちら
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クラスメイトは1歳から73歳まで。教科書と屋根のない教室「みんな集まれ!ワクワク農園」
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【ライター情報】
しまだあや
作家・エッセイスト。1987年大阪生まれ。奈良に移住して5年、寝室以外の94%を地元の10〜20代に開放するという暮らし方をしている。雑誌やWebなどでの執筆を中心に、企画、MCなど。代表エッセイに、note「今週末の日曜日、ユニクロで白T買って泣く」「7日後に死ぬカニ」他。

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2023.03.10 UP

いいサイクルはじめよう、いこまではじめよう

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