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【レポート】いこまちマーケット部2期生vol.02

1回目の講座では自分の経験や想いを中心に話したのに対し、今回は「マーケットがある日常を考えよう」がテーマです。

「幸せな」買い物と「さみしい」買い物
まずは幸せな買い物ってなんだろう?を考えてみます。

・子どもがやりたいと言ったワークショップで作ったものを、その後も大事にしているのをみたとき
・コンサート会場真横の良いホテルに泊まったとき、コンサート前は人の流れを見ながら今から始まる高揚感を感じ、終わってからはずっと余韻に浸れたこと

「経験にお金を払うと、思い出に利子がついて返ってきていつまでも続く。時間を超えてお金の価値が返ってくることが多い」と若狭さん。鈴木さんは「価値の交換は点でとらえがちだけれど、これらの話は価値の交換を線でとらえるということ」と話します。

・仲良くなったパン屋の店長さん店員さんと家族ぐるみで仲良くなった。おまけしてくれたり、定休日にパンをわざわざ届けてくれる
・あげた野菜がおかずになって返ってくる、もらったものをおすそ分けしたらジャムになって返ってくる、「食べきれないから『食べ助け』して」と、おすそ分けをもらったとき

という意見に対しては、「おすそ分けした方がより自分が幸せになれるということをみんな分かっている」と若狭さん。鈴木さんも「おすそ分けの促進として買い物があるのかもしれない」と続きます。

・カメラ、車、家など家族との思い出に関連するもの。値段は高いけれど、長い時間をかけて思い出や幸せを得られる
・クリスマスツリー。子どもができてから子育てに必死で買うものといえば日用品ばかりで、買い物を楽しめなくなっていた中で、妥協せずに選んで買ったツリーが、年を追うごとに家族の思い出が乗ってきて、あれはいい買い物だったと思える

「1回目の講座で『時間は人生の一部だから、それをお金に換える感覚が合う人合わない人がいる』という意見があったが、時間を人生という言い方で表現するのも、この思い出の話と繋がっている」と鈴木さん。若狭さんも「こういったお金の使い方は、その人との関係性の未来に期待しているのかもしれませんね」と話します。

・誰かの顔を思い浮かべて、「この人にあげたいから」とする買い物
・誰かへのプレゼントや将来を想像する買い物。確実に残るかどうかわからなくても楽しい
・作家さんの作品を直接買ったとき

という意見も上がりました。同時に、さみしい買い物も考えました。

・見本と違ったものが出てきたとき。それを出してくる人の気持ちをさみしく感じる
・お店の店員さんの態度が悪かったとき。気に入って買ったはずなのにそこに行く度にそれを思い出してしまうし、商品の記憶としても残ってしまう
・海外のマーケットで、現地の人は安い値段で買っているのにふっかけられたこと

「商品やサービスが残念で自分が損したことよりも、そんな商品を出してきたりそんな態度を取る心構えがある人がいることが嫌だという感覚がおもしろい。不誠実な態度を取られたことに対する怒りですね」と講師の2人。

・お店のアプリ注文。前はお店の人に今日のおすすめを聞いたり会話を楽しみながら注文していたのに、それができなくなったこと

「職場や学校以外で知らない人と関わるのが買い物。それがなくなると、社会との接点がなくなってしまう」と鈴木さん。若狭さんも「人が注文をとると間違うこともある。そんなノイズがなくなりつつあるのはたしかにさみしい。これまでは悪いサービスも含めて楽しんでいたのかもしれない」と付け加えます。
鈴木さんは「みなさんの想いが乗っているのが良かった。買い物や未来への期待感があるように思う」、若狭さんは「“時差”があるのがポイント。今この瞬間のことを5年後10年後に思い出すかどうか。記憶はノイズがあって思い出せるもの。マーケットは季節やロケーションなどがあってそういうものを発動しやすい」とまとめました。

マーケットで「地域とともに生きる」を実現する
次に、鈴木さんによるマーケット講座がありました。

鈴木さんが小さい頃よく遊んだ公園には、現在公園のど真ん中に遊具が置かれています。鈴木さんが小さい頃にはなかったのに、ボール遊びを禁止させたい行政が作ったもの。ボールが飛んできて困っている人以外に、ボール遊びがしたい人、ボール遊びをさせたい人、地域に住む人々など、それぞれの立場の人が一緒に話し合いをしなかったがための結末でした。ほかにも解決の仕方があったはずなのに、地域の人が集う場、ともに考える場がなかったことが原因だと考えられます。
マーケットは、「地域でともに生きる」のひとつの形を作れる場になり得るのです。

埼玉県狭山市で2019年から行われている「シンサヤママーケット」は、商店街活性化を考えることをきっかけに始まりました。空き店舗に入ってもらうのは難しいと判断し、商店街が持続可能であるためにと、道路を閉鎖してマーケットを開催しています。
商店街が提供できることとして、買い物だけじゃなく、このまちに滞在してもらって、遊んだり、コミュニケーション取ったりできる場所も同時に作りました。

屋外空間における活動は、以下の3つのタイプに分かれています。

必要活動 通勤や買物など義務で必要に迫られて参加する必要な活動(移動する)
任意活動 散歩や日光浴など、条件があえば自然発生する活動(ベンチに座る、買い物する)
社会活動 あいさつや会話など、複数の人と行う関わり合いの活動(人に話しかける、遊ぶ)

シンサヤママーケットでは、3つの必要活動、6つの任意活動、4つの社会活動の13のアクティビティが確認されました。
駅など必要活動だけが行われている空間と比べて、ベンチに座って本を読んだりコーヒーを飲むなどの任意活動が多く行われている結果、社会活動も起きていることが良質な空間とされています。
シンサヤママーケットでは任意活動と社会活動が多く、滞在時間の増加、コミュニティの促進、シビックプライド醸成が期待できるという結論に至りました。

今後のマーケット自走化に向けて大事なことも話してもらいました。

1 目的と手段を適切に検討する。目的のための手段は何かをしっかり考えて選ぶ
2 公費投入時から無理をしない資金計画、運営計画を行う。例えば、行政からの物資や資金提供は自走化したときに継続が難しくなる
3 説得しようとしない、ゆるやかなコンセンサスを目指す。地域にいる価値観が違う人たちとの完全な合意や説得は難しい。“なんとなく”の合意で進めていく
4 「私も関われる」と思える余白を設計する
5 実践しながら仲間を増やす

シンサヤママーケットも、3年の実証実験後に商店街や地域の人たちと協力して自走化。月1回ナイトマーケットなどを開催しています。その結果、商店街の空き店舗がどんどん埋まっているそうです。
海外のマーケットを研究していた鈴木さんは、「良質なマーケットがあることが、そこの不動産価値を上げる」という研究結果が出ていることも紹介。新狭山も例外ではないそうで、とても興味深い内容でした。

最後に、1回目2回目の講座の感想を伝えあいました。

・もっと実務的な話かなと思っていたけれど、それ以前に一度いろいろ考えてみる時間があったのがよかった
・買い物に関する意見交換では、感情の本質的な部分にあまり誤差がなかったので、そこをすり合わせて企画すれば、比較的満足度の高いマーケットができるのではないかと思った
・自分の中の想いを共有できて、みなさんに通じたのがよかった
・まちなかで出会ったら風景の一部だったかもしれない人たちと、こんなパーソナルな会話ができたことがいい時間だった
・ひとつのマーケット開催に向けて、いろんな想いの人が集まって話せたことが楽しかった
・定期的にいつでも行けるマーケットというのも、おもしろく心地いいかもしれない
・やっぱり生駒の人はおもしろい。しゃべって交流することでおもしろいことが生まれることを実感した

「多様な人間の縮図がマーケット。どんどん次のサイクルが新たに生まれないと、このまちは面白くなくなる。それが生まれるマーケットになればいいですね。マッケートを1回大きくやるでもよし、小さいのを毎週やるでもよし、そこはみんなで考えていったらいい」と若狭さん。
鈴木さんは「ハードルを上げすぎない、広げすぎないで、まずは1回マーケットをやってみることを目指していきましょう。みんなが心地いいぐらいの塩梅でいきたい」と締めくくりました。

次回は、1期生とも交流しながら、生駒のマーケットについて考えていきます。

レポート:いこまち宣伝部5期生・いこまちマーケット部1期生 田村るみ
写真撮影:いこまち宣伝部6期生 中村京子

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