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創る力、生きる力。森とひと続きのまち、獅子ヶ丘

生駒市は、地域の人が歩いて集える自治会の集会所や公園などの地域拠点を活用し、新しい地域のつながりをつくる、「複合型コミュニティ(まちのえき)」づくりを進めています。いったいどんな活動やつながりが生まれているのでしょうか。エッセイストのしまだあやさんが、獅子ヶ丘(ししがおか)を訪れました。

こんにちは。しまだあやです。
ご近所にあるコミュニティを探検し、ここで体験記を書かせてもらってます。今回訪れるのは、獅子ヶ丘の「まちのえき」。奈良最北端に位置する、生駒市高山町にあります。マルシェをするよ〜とのことで、遊びに来ました。

森とひと続き。みんな創りたくなるまち

会場までの道のりには、ジブリの世界のようなおうちがたくさん。そもそも奈良自体が、緑に近い場所なんだけど、獅子ヶ丘は、森と家がつながってる感じ。そんな道を奥へ進むと、パッと開けた広場に到着。なんて光が綺麗な場所!

「自治会活動の一環として、住民が出店するイベント」と聞いていたので、なんとなくイメージで、簡単な手作りバザーやフリマ、ちょっとした炊き出しがあるんかな〜なんて思ってたんだけど、

ん……?

これは……、

やっ、プロの業すぎませんか……??

こりゃ、完全なるクリエイターズマーケットだ! え〜、もっと現金おろしてきたらよかった。(笑)

なんでなんで? このまち、作家村なの?? 早速聞いてみる。こちら、木工作品を出店されている江川さんです。

素敵な作品ばかりで驚いてます。あの、これはどういう……?

「みんなすごいでしょ。獅子ヶ丘は、『先生』って呼ばれるような人がいっぱい住んでるんです。陶芸家、園芸家、写真家、ガラス作家……僕は木工工房をやってるよ」

今から50年前に生まれ、当時は「田舎の別荘地」として知られた獅子ヶ丘。住人には、キャリアを重ねてきた人も多いんだとか。環境も良いので、作家さんが移住したり、住人の影響で創り始める人も。

今日は、こども会のみんなや学生たちも出店。これだけいろんな作品に触れられる場所だもん、こどもたちも自然と創りたくなるんだろなあ。

「家まで創っちゃう人も、結構いるよ」と江川さん。確かに、会場までの道のりにも、素敵なおうちがたくさんあった。森とひと続きで、ガーデニングがデフォルトというか。

獅子ヶ丘に暮らすランドスケープデザイナー、清野陽介さんのお宅

「そうそう。春には『獅子ヶ丘オープンガーデン』っていうイベントするから、またおいで。いろんなおうちの庭を自由に見て回れるよ」と、見せてもらったチラシ。真ん中の写真、りすがいる! こんなシーンが日常的に?

(獅子ヶ丘自治会 Instagramより リンク)

「いろんな動物が遊びに来るよ。うさぎ、きつね、たぬき、みみずく、きじ。それからあなぐま、あらいぐま! 僕んちにはイノシシも来るね。派手に耕してくれて……(笑)こないだなんて、屋根の上にちっちゃいおっちゃんおるな〜って思ったら、さるやったわ」

「素敵なお庭があるまちはたくさんあれど、こうして開かれてるのが、このまちのいいところ」
と江川さん。オープンガーデンの写真はどれも、映画のワンシーンのよう。ハンモックやツリーハウス。木に吊られたブランコに、オーバーオール姿の少女が……『世界名作劇場』でしか見たことないよ!

「獅子ヶ丘の人たち、暖炉でもピザ窯でも、なんでも創るよ。 僕なんて、家の修理で業者さん呼んだ時、ご近所さんに『こらー!』って叱られたもん。『なんで俺にゆうてくれへんねん、やったんのに〜!』って(笑)」

それくらい、創作文化が根付くまち。自然と共に生きる上で、自分の手で創り出す行為は切り離せない、日常生活の一部なんだろうな。

大人の背中が、こどもたちの追い風に

お昼ごはんの時間。おいしそうなものがいっぱいで迷う。とりあえず、ホットレモネードで体を温める。

お、こっちは「スパイス飛鳥鍋」だって、おいしそう。 獅子ヶ丘で「オルタナティブカレー」というお店をされているご家族だそうです。ひとつくださーい!

と、出来上がりを待っていると。
「まもなくこちらで、マジックショーを行います! ぜひみなさま、お集まりください!」

小学生マジシャン「ブンジ」君による手品がはじまる。飛鳥鍋片手にのんびり観始めたのも束の間、一気に前のめりに。手品のワザはもちろん、観客も巻き込むマイクパフォーマンスも素晴らしい。

ショーを終えたブンジ君に、インタビューを申し込んでみた。

手品を始めたきっかけは?

「まちの図書館によく行くんだけど、そこで手品の本を見つけたのが最初。できるようになったら、友達にも楽しんでもらえるかなって」

でも本だけじゃ実際の感覚は掴みにくいだろうし、何よりこのMC力は一体……?

「このまちにも手品の師匠みたいなおじさんがいて。コラボお願いして、トーク勉強させてくださいって言いました」

なるほど、すごい行動力!

「このまちは、いい人が多いから。あと、何でも自分たちの力で、やってる人が多いから」

まちの大人たちの姿勢に、こどもたちも背中を押されてる。今日は学校の友達も来ていて、ショーを観せるのは、はじめてだったみたい。次はブンジ君の姿に、背中を押される人が続いていきそう。

日常のエピソードが防災に

さて、気になるブースがあるんです。「獅子ヶ丘リアル人生ゲーム」。

聞けば、生駒市による「いこま未来Lab」というプログラムがあるらしく。大学生が地域の団体にコミットし、抱えている課題をもとに企画を立案・実践するというもの。で、今期は学生たちと獅子ヶ丘のみなさんがタッグを組み、このゲームが生まれたとのこと。

生駒市公式ホームページ「いこま未来Lab」より

おもしろそう、早速やってみる! ルールはすごろくと同じ。サイコロを振って、出た目を進む……んだけど、

『イノシシに庭を荒らされる。隣人と協力し、完全復活。植えていたお茶っ葉でティーパーティー』

『倒木で停電。明かりがないので自治会長が所持する彫刻がより一層ホラーに!』

シチュエーションがめっちゃ具体的。しかも「イノシシに荒らされる」って、さっき木工作家の江川さんも言ってたような。

「これ全部、実話なんです。獅子ヶ丘で暮らす人々の体験談を元にマスを創ってます。テーマは防災。遊べばまちのみなさんのことを、よく知れるようになってます!」と学生さん。

なるほど〜! いざという時に声を掛け合い、助け合える関係性が、防災の要(かなめ)だもんね。

マスを進む中で、協力してクイズを解いたり、ハイタッチしたり、ニックネームで呼び合ってみたり。そしてゴール! やったー!!

ゴール記念(?)に、こんなものをいただきました。『自治会長カード』…なになに?

『Q1. お名前・あだ名を教えてください。
『A1. 林修司です! しゅうちゃんと呼んでください。』

し……しゅうちゃん?

「はいはい、何でしょうー!」

玉虫が飛ぶ姿も、蝉の鳴く順番も

あ〜どきどきした。自治会長さんを、いきなり幼馴染みたいなあだ名で呼んじゃった。でも、おかげで距離が縮まったかな。お話を聞いてみます。改めまして、しゅうちゃんこと、林さんです。

獅子ヶ丘のまちのえき、普段はどんな活動を?

「大小さまざまなイベントをするよ。大きいものは、今日みたいなマルシェ。小さいものは、体操教室、ヨガ教室。蕎麦打ちやったり、バイク好きな人も多いから、バイクピクニックしたり。高校生が乗ってるみたいな、ちっちゃいバイクでのツーリングやけどね(笑)」

奈良の最北端って聞くと遠く感じるけど、大阪も京都も出やすいもんなあ。バイクや車があれば、30分。通えるふるさと、獅子ヶ丘。

「『ワインの夕べ』も楽しかったなあ」と写真を見せてもらう。お店かと思ったら、これが自治会館とのこと!

「もっとゆるいのもあるよ。焚き火を囲んでゆっくり飲む会、とか。あと賞味期限パーティ。期限が近いもの持ち寄って、定額500円でワイワイ」

それすごくいい! 私も真似したい。

「江川さんも言ってたと思うけど、このまちにはいろんな先生がいるから、無尽蔵にアイデアが出る。で、思いついたらすぐ実行まで運んじゃう」

そんな林さんは、獅子ヶ丘への移住組。生まれは山だけど、大きくなってからはずっと大都会で働き、その大都会を見下ろすマンションで毎日を過ごしたそうで。

「ここに住むなんて思ってなかった。いろんなまち、いろんな家、50軒くらい見たなあ。でもここに、50年ぶりの音があった。景色があった。
蝉の鳴く順番。玉虫がふつうに飛んでる。
一瞬で蘇った。こどもの頃の記憶も、感覚も。ああここだ、って思った」

「こどもたちが、まちを出ちゃうことも多い。でもこうしてイベントがあれば、たまに遊びに帰ってこられる。そういう時、『やっぱりいいね』って、ふと思える獅子ヶ丘でありたい。いつか、いつでも、戻ってこられるまちでありたい。」

生きている、って感じがある

他にも、いろんな人に「このまちにいる理由」を聞いてみた。みんな、この美しい光が注ぐ景色を、美しい眼差しで包みながら、獅子ヶ丘の好きなところを話してくださった。

「自分の場所を、自分で創りたいなって思ってたの。で、ここに来て、今の家の空き地を見た時、ブワッとイメージが広がった」

「日向だけでなく日陰も好き。段差も坂も多くて、決して穏やかさだけじゃない地形も好き」

「喧嘩もくしゃみも、お隣に聞こえちゃう生活だった。でも今は、4人のこどもたち、みんな思いっきり走り回ってる!」

「春は薪割り、夏は草刈らなあかん。家は壊れてくしイノシシは荒らすし、自然が多すぎる(笑)。でも生命力がある。植物も動物も人間も、『生きている』って感じがある」

「生きている」という感じ。
「生活」という言葉に、その文字が入ってるの、見慣れすぎて忘れてた。でもこの場所は、そんな生活の大事な部分を、いっぱい感じられる空間だった。

ひと続きの森との暮らし。開かれた庭たち。自分たちの手で創作をする人々も、その姿に背中を押されるこどもたちも。人々がこの場所を選んだ理由も、そしていつか戻りたくなる理由も。

獅子ヶ丘のまちのえきには、「生きている」という感じがありました。

\お知らせ/
獅子ヶ丘の「まちのえき」Instagramで活動発信中!
ぜひ、訪れてみてくださいね。
https://www.instagram.com/shishigaoka.sdgs/

おまけ

獅子ヶ丘、大きくて元気なお犬様がたくさんいた。日頃は生駒で活躍し、能登にも出動して命を救ったフリーランスの警察犬たちも。 やっぱり、生きる力!!

2026.02.06 UP

いいサイクルはじめよう、いこまではじめよう

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