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【いこまのすまいTOPICS】自宅のガレージをたこ焼き屋に改装!母娘で楽しく働き、収入も得る自宅活用術

2022年2月、生駒市の萩の台住宅地内にオープンした『たこ焼き&駄菓子屋 mago6(まごろく)』。
娘の西田麻美(まみ)さんが住んでいる家のガレージを改装し、母の内田美恵子さんと営む店舗です。
自宅の一部を店舗にすることになった経緯や、そのメリット、苦労などを聞きました。

たこ焼き&駄菓子屋 mago6
生駒市萩の台にある、たこ焼きと駄菓子を販売するテイクアウト専門店。営業時間は10:30〜16:30。定休日は金・土曜。
インスタ:https://www.instagram.com/mago6_222

オープン決意前
「70歳を過ぎてお店を持つのはむずかしい」というあきらめ

「母が『いつか自分のお店を持ちたい』とよく言っていたので、私から開店を提案しました」

そう話すのは、娘の西田麻美さん。母の内田美恵子さんは、シングルマザーとして複数の仕事を掛け持ちし、麻美さんたち兄妹を育てました。子育て中は自分の店を開く余裕はなく、働いてばかりだったといいます。

子育てが落ち着いてから、麻美さんの前でときどき「お店、やりたいな」とつぶやいていたという美恵子さん。飲食業の経験が長く、フードコートにあるたこ焼きやラーメンなどを販売する飲食店に勤めていた時期もあり、麻美さんは美恵子さんが「自分のお店を持つなら、たこ焼き屋が楽しそう」と考えていることを知っていました。「でも、70歳を過ぎてお店を持つなんて、むずかしい」。美恵子さんはそう考えて、あきらめていたのです。

娘の優しさや感謝を受けとめ、開業を決意

母親のそんな姿を見て「好きなことをして生きてほしい」と思った麻美さんは、あることを思い付きます。「うちのガレージを使えばええやん!」。それは、なんと麻美さん宅のガレージをたこ焼き屋へと改装する計画でした。

「近隣に、ガレージを活用した酒屋があったんです。私が引っ越してきたときには閉店していたんですが、跡地を見て『物件を借りなくても、ガレージで店ができるんや』と思っていました。それを思い出しピンときて、母に『ガレージなら家賃かからんし、どう?』と提案しました」と、麻美さん。2021年のことでした。

それを受けて、美恵子さんは半年間悩んだそうです。「めっちゃ悩みました。長年の夢やったけど、失敗したら収入がなくなってしまうし、周囲からも『そんな甘いもんちゃう』と反対されましてね。でも娘が『儲けんでいい。失敗してもいい。うまくいかなければガレージに戻すから。初期費用とか全部私が出すから気にせんでいいよ。気軽に考えて。たこ焼きが売れなかったら私が食べる』とまで言ってくれて。その気持ちが嬉しいし、失敗してもいいと言われて気が楽になって、『まずは一年だけ頑張ってやってみよう!』と決心できたんです」。

オープン準備
賑わうお店を目指し、駄菓子屋とセットで設計する

当初はたこ焼きだけを販売する店舗を考えていましたが、「母が一人でぽつんと営業している光景が浮かんでしまい、賑わうお店とは何かを考え直しました」と話す麻美さん。そこで、麻美さんが子どものときに毎日通っていたたこ焼きと駄菓子を売るお店の居心地がよかったことを思い出し、駄菓子屋の要素も備えることにしました。「子どもたちが『おばちゃん!』と母のもとへ集まる様子が想像できて、それなら母が楽しく働けるだろうと思いました」と麻美さん。

元酒屋の家に引っ越してきた人から、「ガレージはかなり改装されていて、元の状態に戻すのに高額な費用が必要だった」と聞いた麻美さんは、「母の精神的な負担にならないように」と、お店をたたみやすくするため、ガレージに戻しやすい設計にすることを決めます。次のようなイメージを組み立て、建築士の夫に設計を頼んだのです。

・たこ焼きをつくるスペースと駄菓子を並べるスペースをつくる。各サイズは何度もシミュレーションして、決定。
・駄菓子の陳列棚や照明は、外せばすぐ元に戻るシンプルな設計に。
・特に子どもたちがくつろげるよう、店内奥に小上がりのキッズスペースを設置。
・母の友達などが来店したときのため、大人が座るカウンターも設置。

改装は身内でDIY。お店は母へのプレゼント

改装はすべてDIYで行いました。ブロックを積み上げ、その上にコンクリートパネルをのせて調理場や小上がりスペースをつくったのです。土台に埋め込まずにのせて固めただけなので、ドリルを使えば解体しやすいつくりになっています。これらの作業は麻美さん夫婦と左官屋の義父で進めました。商品陳列棚や照明は、ねじを外せば取れる仕組みにしています。壁のペンキ塗りや商品陳列棚の組み立ては、麻美さんの子どもたちにも手伝ってもらったそうです。

開店にあたり、美恵子さんはスーパーの惣菜づくりの仕事を辞めるつもりでいましたが、職場から「月に一度でもいいから来てください」「(たこ焼き屋が)無理やったら帰っておいで」などと言ってもらいました。週に一度だけのパートを続けながら、たこ焼き屋をメインとして働くことにしたのです。フラフープの講師を15年も続けている麻美さんも、その仕事は続けることにしました。

取材中、美恵子さんが席を外したとき、麻美さんは笑ってこう話してくれました。「駄菓子の仕入れも合わせて、初期費用は150万円くらいかかりました。私は反抗期が長くて(笑)、母には何十年も迷惑をかけてきたので、好きなことをさせてくれたお礼です。安いもんですよ。『ありがとう』は照れくさくて直接言えないので、形にしました」。

オープン後〜今
仕事を通じて、より明るく若々しくなった

2022年2月22日。ついに、テイクアウト専門の『たこ焼き&駄菓子屋 mago6』がオープンしました。美恵子さんには5人の孫がいて、店名に「お店は6人目の孫のように大切なもの」という意味をこめました。美恵子さんは72歳で夢を叶えたのです。

「オープン後、お客さんから『このあたりにはお店が少ないから、新しいお店ができて嬉しい』『子どもが気軽に行けるお店ができてよかった』などの声をいただきました。当店の向かいに幼稚園のバスの停留所があるので、小さなお子さんもよく寄ってくださいます。イメージしていた通り、子どもたちで賑わうお店になりました」と、麻美さん。

また、娘として、美恵子さんの変化も感じたそう。「『たこ焼きを焼くのは飽きないし楽しい』って言うから、本当に好きなんでしょうね。表情がより明るくなって、姿勢もよくなったと思います。気持ちの影響が大きいのか、以前は健康診断でひっかかっていたヘモグロビンの数値も改善したそうです。私の目標は、母が楽しい気持ちになることなので、母が『やってよかった』と思ってくれたら大成功です」と語ります。

昔からとにかく人が好きだという美恵子さんは、「お客さんが来てくれると嬉しいし、『おいしかったからまた買いに来たよ』と言われると、もうたまらない(笑)。友人に『最近、めっちゃ若なった』と言われました」と笑顔で話してくれました。

美恵子さんが特に印象的だったのは、古い友達が偶然お客さんとして来店し、数十年ぶりに再会できたこと。嬉しさのあまり、号泣したそうです。そういった友人との再会の機会が多く、やりがいの一つになっているといいます。

自宅だからこそ、すき間時間を活用できる

麻美さんは、自宅の一部をお店にして地域へ開く「住み開き」のメリットをこう話します。「お店が暇なとき、お店を母に任せて、ちょっと家事をしたり休憩したりできます。だから『暇でどうしよう』とは思わず、行き来できて幸せやなと感じています」。

母親のためにと追加した駄菓子屋でしたが、実は今、駄菓子商品を探して仕入れる作業が麻美さんにとって大きな楽しみになっています。「私もお客さんが喜ぶ顔が好きなんですよ。来店した子どもたちに『今日の新作はどれでしょう!』と言ってやりとりしたり、お客さんのテンションが上がる様子を目の前で見たりするのも楽しくて。母も私も、ここで好きなことをしているので毎日がとても楽しいです」。

理想を最初から目指さず、やってみて改善すればいい

現在、経営は黒字で、美恵子さんにとって大事な収入にもなっています。良いことづくしですが、大変なことがあるのか、麻美さんに尋ねました。

「お店の前に車が2台駐車できるんですが、長時間停まると人が通りにくくなってしまうので、たこ焼きは予約でも承ってすぐにお渡しできるようにしたんです。また、オープンから数ヶ月経った頃に西陽の強さが気になって店頭幕を制作するなど、後からいろいろ改善しました。今も苦労しているのは、ガレージ内の湿気が強く、駄菓子の品質管理がむずかしいこと。個装商品を選んだり、夏は定休日でもエアコンをつけたりして、工夫しています」

また、ガレージを店舗にしたことで、自家用車が停められなくなってしまったので、近隣の駐車場を借りて停めています。

最後に、自宅の一部をお店にしたいと考えている人へのアドバイスを麻美さんに聞きました。

「最初から『あれもこれも』と理想の100%のお店を目指さず、やってみてから改善していけばいいと思います。スモールスタートのほうが始めやすいです。ぜひ一歩踏み出してください」

2024.02.13 UP

いいサイクルはじめよう、いこまではじめよう

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