good cycle ikoma

原点は「面白そう」。住宅の当たり前を問い直した、自分に素直な家づくり

「自分たちで家をつくりたかった」と話す吉田田さん一家は、設計段階からリノベーションに取り組みました。自分の感性に素直に。とことん家族の幸せを考えた家づくりがありました。

overview

居住者構成 4人 | 以前の住まい 大阪府大阪市 | 居住開始 2012年 | 軽量鉄骨造・平屋 | 敷地面積 231m² | 延床面積 95m² | 建築年 1972年

profile

兵庫県に生まれ、大学卒業後にアトリエe.f.t.(https://goodcycleikoma.jp/city/512/)を立ち上げた吉田田(よしだだ)タカシさん。大阪府生まれの妻・テンコさん、そして2人の子どもと暮らしています。

路地裏で見つけた、自分たちの住まい

大阪本町から地下鉄で25分の生駒駅。阪奈道路方面へと向かう大通り沿いには大型スーパー、警察署、ガソリンスタンドなどが建ち並びます。

ここから1本通りを入ると、静かな雰囲気に様変わりします。路地裏では、吉田田家の子どもたちが迎えてくれました。2人のあとを追いかけて石段を下りていくと、自動車の音は遠くへ、かわりに川のせせらぎが聞こえてきました。

かつて百人一首にも詠まれた歴史ある竜田川沿いには小さな畑つきの家々が続き、旬の野菜を近所へおすそ分けする関係もあります。やがて、木製扉が目を引く平屋が現れました。

美大卒業と同時に、大阪市内で美大受験生向けのアトリエを立ち上げたタカシさん。現在は生駒市に子ども向けのアトリエを構え、大学講師も務めます。全ての仕事に共通する軸は、教育。「子どもたちに、価値観が多様化していく社会を生きる力を身につけてほしい」と話します。

タカシさんは、中学生の頃から自分の部屋を頻繁に模様替えしていたそうです。大人になってからは、物件探しがライフワークに。いつか家を設計したいという思いを胸に、毎日不動産サイトをのぞいては、リノベーションを前提に家を探していました。タカシさんのそうした関心が、この物件との出会いを生んだのです。

内見当日。路地の突き当たりというロケーションに、妻のテンコさんも一目惚れをします。大通りから1本入っただけとは思えない静けさも気に入りました。

物件を購入すると、知人の店舗デザイナーとともに、家づくりに取り組みました。「初めてだから、100点満点は目指せなくて当然」と口にしながら、図面を何度も描いては、模型とにらめっこする作業でした。

「むしろ面白かったですね。自分で手を動かし始めると、家づくりにはたくさんの『当たり前』があることに気づいたんです。たとえば『子ども部屋はつくるもの』『窓に雨戸はつけるもの』『熱効率は少しでも良く』といったように」。

「でも」とタカシさんは続けます。

「わずか10年のために、子ども部屋が本当に必要だろうか。エアコンで暖はとれるけれど、薪ストーブの炎があれば、心に豊かさが生まれるかもしれない。100組の家族がいたら、100通りの価値観がありますよね。自分の家族はどんな暮らし方をしたくて、どんな設備がいるか。1つ1つを、家族で話し合いました」

求めたのは、人が集える家

吉田田さん一家の住まいは玄関とリビングが接しており、段差がほとんどありません。

「段差があると、床下の風通しが良くなり、基礎の腐食を防げるけれど、ときに移動を制限してしまう。せっかく庭に芝生を植えても、室内から眺めるだけになってしまいます」

リビングの床を下げることにより玄関、庭との一体感を演出。ゲストが上がりやすく、子どもがはだしで庭へ出られる土間のような空間が生まれたのです。

一方、家族のプライベートな空間とゲストの空間を、快適に両立する工夫もなされています。間仕切りにはくぐり戸がついており、子どもも大人も自由に出入りができます。ここに「子どものうちから、親の背中にふれてほしいし、色々な大人との出会いを生きる力につなげてほしい」というタカシさんの思いがありました。

個人の感性に突き抜けた住まい

「この扉は、幼なじみの実家から譲り受けたんです。小学生の頃ファミコンをしに、コロコロコミックを読みに行ったときの、扉をガラガラと引く感覚をめっちゃ覚えているんです」

幼なじみが実家を建て替えると聞き、タカシさんは兵庫県まで軽トラックで引き取りに向かったのでした。個人的な思い出の詰まった建具だからこそ、味わいが訪れる人を惹きつけます。

吉田田家の住まいのビフォー・アフターを見て、最も影響を受けた人は、不動産業を営むテンコさんのお兄さんでした。

内見直後に相談を受けた当時は「焦らなくても大丈夫。築40年を迎えているし、大通りに面していないし、なかなか買い手はつかないよ」と返事をしたそうです。

ところが、リノベーション後の姿に「こんなふうに生まれ変わるの?すごい。めっちゃあたらしい価値、生まれてるやん」と感激。ついには自社の新規事業としてリノベーション事業を立ち上げてしまいました。

お兄さんが見出した価値とは、どのようなものでしょうか?最後に、タカシさんがこう答えてくれました。

「面白さですね。家はこういうもの、と決めつけることなく、家族で考えて、話し合って、とことん自分たちの感性で家をつくる面白さ。けっして楽なことばかりじゃないんですよ。でも、その先には何ものにも変えがたい豊かな暮らしが待っていると思うんです」

家族で始める家づくりは、幸せに出会うための小さな冒険かもしれません。

(2019.11.20)

いいサイクルはじめよう、いこまではじめよう

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